ビジネス

2020.03.02

CM制作側から見た必須ビジネス3文字の理解の壁

3月2日に公開されたPMO訴求のDAIGO起用のCM。YouTubeより

規模の大小、業界の種類にかかわらずプロジェクトベースでビジネスが進む時代。社内外の適切な人材を集めたベストな組織が共通のゴールを目指すとき、スモールスタートのプロジェクトなら高効率に進めることができるが、複数のプロジェクト、または千人単位の規模となると、機能する「まとめ役」が必要となる。

昨今の超ホットキーワード、DX(デジタルトランスフォーメーション)も一夜にしてかなうわけはなく、プロジェクトは細かく分かれ、その進捗の結果がDX化だ。そして、プロジェクトを円滑に進行させるために「PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)」の存在があらためて注目されている。


【PMO】
PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)とは、PM(プロジェクトマネジャー)の右腕となり、現場を誰よりも把握し、組織にとって正しい意思決定を支援する「組織の機能」。PMをチームでサポートする実行支援組織のことを言う。(MSOLのHPより参照)


PMOは決して最新のワードではないが、にわかに脚光を浴びるそれは、IT・テクノロジー業界だけでなく、多くの企業で導入が進んでいる。

──が、意外にも、PMOの内容を理解している人は多くない。

プロジェクトをマネジメントするんでしょ、と文字面をなぞることはできても、さてその実務だ。今回、東証一部上場を果たしたばかりのMSOL(マネジメントソリューションズ)を題材にさせていただき、PMOを理解してみたい。

同社はPMOとその人材を企業に送り込むプロフェッショナル集団。3月2日よりPMO訴求のCMを打つという。多くの企業に有用なPMO、必須ビジネス3文字として認知と理解の浸透が鍵だとすれば、理解の過程にフォーカスしてはどうだろう。PMOのCMを制作する側は素人であったはずだ。そこで、同社のCMを引き受けたクリエイティブ ディレクター(以下CD)に話を聞いてみる。

未知のプロジェクトマネジメントの世界に、強力なフックを


MSOLのCM制作を担当した博報堂のクリエイティブディレクター、大野耕平は、いくつもの有名CMを手がけてきた敏腕だ。しかし、いわゆるビジネス系ソリューションの訴求に関しては、ほとんど縁がなかったという。

「PMOと聞いて、そしてMSOLさんのブランディングと聞いて、少なくともそれが何なのか、調べることから始めなければなりませんでしたね」

博報堂の大野耕平の写真
大野耕平 博報堂 第二クリエイティブ局 大野チーム チームリーダー クリエイティブディレクター


「ただ、分からない、というのは大事な入り口なんです。理解するためのきっかけが必要で、それがCMの果たす役割になります。昨今は、タクシーアドをはじめとしてビジネス系のCMが増えているなかで、実際に“需要があるのに認知が低いPMO”を世の中ゴトとしてデビューさせるには、いちばん“強く言える人”の存在が必要でした」

CMにDAIGOを起用した理由


商品やサービスを浸透させるためには段階があると大野は言う。少なくとも、PMOを導入していない企業(のほうがまだまだ多い中)にとっては、それが何の頭文字か、なぜ、マネジメントが内製じゃないのかもわからないかもしれない。

「DAIGOさんの略文字いわゆる〈DAI語〉は、とても強いフックになります。PMOという有用なソリューションがまだ知られていないなら、その言葉の力でまず認知を高めるというのは最も大切な過程です」

そして大野はDAIGOを起用し、彼の強力な個性DAI語を使って、理解のきっかけを提供した。



現場では、DAIGO自身が積極的にアイデアに参加したそうだ。PMOをパパ・ママ・俺とし、本物のご両親を登場させる働きかけを行なってくれるなど、真摯に取り組んでくれたという。

ある事象、ビジネススキーム、思考や立ち位置などを示す英単語・頭文字のキーワードがあふれているが、業界横断や新規参入の潮流を受け、自分には縁遠いでは済まされない時代だ。例えば「DMP」はすでに多くの業界でデータ活用の基盤として導入が進んでいるし「MaaS」においてはクルマ業界とともに多様な企業がその世界を熱く盛り上げる。また、新型コロナウイルスの脅威に対して日本政府が2月25日、対策の基本方針を示したが、そうなると「BCP」というワードも思い浮かぶ。

PMOに関しても、接点が無い場合、まずキーワードとして見聞きすることで、理解の入り口に立つ。そうして自分は無縁でないことを理解していくのだ。
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文=坂元耕二 写真=西川節子

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