S(Society)は、社会的視点です。上記のようなキャッシュレスサービスが広まれば、消費行動のログ情報が蓄積、活用され、個人個人に最適化(パーソナライズ)されたサービスが提供されることになります。利便性が高まる一方で、プライバシーの確保が社会的な課題となります。
欧州では、「EU一般データ保護規則(General Data Protection Regulation,GDPR)」が適用されるなど、個人情報の保護は厳格化の潮流にあり、わが国においても、今年、「個人情報保護法」の改正が予定されています。
しかし、これらは、個人情報を含めた個人に紐づく「パーソナルデータ」の活用を制限するものではなく、個人情報の定義やその取り扱いを厳格化することで、パーソナルデータの活用を促進することをめざしており、いわば「もっとアクセルを踏めるように、ブレーキを強化する」という主旨のものです。
いずれにしても、企業にとって、データ収集の意義および収集したデータの取り扱いを、より厳しく監督される時代が来るということで間違いはありません。
GAFAに代わる新たなプレイヤーの登場
最後はT(Technology)、技術的視点です。昨年夏より、5Gのプレサービスが始まっていますが、スポーツやライブイベントをVR(Virtual Reality、仮想現実)ヘッドセットやAR(Augmented Reality、拡張現実)グラスで、より楽しむという提案がなされました。VRやARなどを総称して「xR」と呼んだりしますが、xRは、5G時代の幕開けとともに、われわれのライフスタイルを変革する可能性があります。
具体例として、KDDIは渋谷駅ハチ公前広場に可搬型5G基地局を設置し、1960年代の渋谷駅前の風景をARで表示したり、ドコモやソフトバンクは、ラグビー、バスケットボールといったスポーツの試合会場でARグラスに付加情報を重ね合わせたりといった体験を提供しています。これは、街やスタジアムという特定の空間に、5Gやデジタル技術で情報をオーバレイ(重ね合わせ)することで、「その場所でなければできない体験」を実現しています。
xRでのこのような技術は、「空間コンピューティング」と呼ばれています。4G時代に達成されたモバイルコンピューティングは、「いつでも、どこでも」サービスを利用できるという価値をもたらしました。5G時代の空間コンピューティングは、「いまだけ、ここでだけ」のサービスにより、新たな価値を産み出します。