「ネットワーク」という概念は過去のものに。5Gが生み出す新たな可能性 #読む5G

サムネイルデザイン=高田尚弥


クラウドコンピューティングで一変


そして、1990年代のウェブブラウザの発明と普及を契機として、アプリケーションをパソコン上で動作させるよりも、データセンターのサーバ上で各種サーバアプリケーションを動作させるような使い方が広がって行くことになります。つまり、パソコンとデータセンターやサーバセンターが、ある意味、対になって急速に普及し、多様な業務アプリケーションを提供してゆきます。

このころは、まだコンピュータは主に業務用途で、個人でコンピュータを保有し、使っている人はそれほど多くはありませんでした。というのも、まだ家庭には光デジタル回線もADSLなどの高速回線もまだ入っておらず、一部のコアユーザがISDNなどのいまから見るとかなり低速なデジタル回線を使って、インターネットなどを活用し始めたところでした。多くの人は、まだアナログモデムを使って極めて細々とした帯域でインターネットに繋いでいました。

ところが、携帯電話網の普及とスマートフォンの誕生から、黎明期のメインフレームを遥かに越えるコンピューティングとストレージを個人が持つようになり、しかもそれを、常時、携帯する時代となりました。

本格的なスマートフォンの普及が始まって、まだ15年も経っていないのですが、われわれの生活は大きく変わりました。そして、普及が始まった当時に存在していたモノやサービスが、次々とスマートフォンのアプリケーションとなっていきました。

スマートフォンは個人が保有していることから、何か事件やニュースがあると、膨大な通信トラフィックが、サーバへと世界中から押し寄せるようになりました。すると、こういったユーザの本能的で突発的な通信トラフィックニーズには、旧来型のデータセンターやサーバセンターでは対処できなくなりました。

そこで生まれてきたのが、柔軟に計算資源や記憶資源を提供できる構造を持った「クラウド」と言われるコンピューティング機能です。

これまでは計画経済的に通信トラフィックや計算ニーズを無理やり予測して、サーバ調達やストレージ調達、ネットワーク帯域調達を行う必要がありました。しかし、クラウドの誕生によって、インターネットや社内ネットワーク上で多様な社内外向けサービスを提供する必要があった企業は、非常に難易度が高いが精度の高くないネットワークトラフィックの需要予測やコンピューティング需要予測から解放されることとなりました。予算策定において担当者と意思決定者を悩ませていた需要予測問題が不要となったのです。

ここまでの変化、あるいは進化は、あくまでもサーバとクライアント端末の間で起こってきたもの(サーバ・クライアントモデル)ですが、5Gは、この関係性を新しいものにすると考えています。
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文=茶谷公之

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