2. 互いの企業文化の違いを理解する
欧米型企業の意思決定プロセスは、まず初めに一旦トップが大きな方向性の意思決定を行い、その決定が組織の下部に落としこまれていく。そのなかで、細かな論点に関しては、フレキシブルに変化することが多い。対して日本型のそれは、トップよりもより現場に近い組織の下部に、実質の意思決定を委ねることが多く、細かな論点を積み重ねていき、全体をつくり上げていくことが多い。
欧米と日本では意思決定プロセスにこのような差があるため、日本側から欧米の企業を見ると、「Aと決定したはずなのに、なぜ途中でBに変わってしまったのか?」と疑問が湧き上がる。また、欧米側からは、日本の企業は「意思決定が遅い」と映ってしまうようだ。互いの意思決定プロセスの違いを理解していれば、このような混乱とストレスは回避することができる。
3. 先にこちらから「ギブ」しよう
交渉のなかで、いつかはテイクする場面、つまりこちらの主張を先方に受け入れてもらわなければいけない場面というのが出てきてしまうものだ。なので、絶対に妥協できない点をあらかじめ明確に考えおいて、それ以外のことは極力ギブ、つまり譲歩しようとするのが良い。
また、一方的に何かを聞き出そうという姿勢は、信頼関係にヒビが入るものだ。情報を聞きたい時には、なぜそれを知りたいのかを伝えることが必要だ。
日本人はとくに、交渉前に十分な調査をして情報をすべて揃えて交渉方針を決めるようにと指示されているためかもしれないが、「予算はいくらか?」などの質問ばかりを浴びせ、交渉相手から失礼と感じられるケースが散見されるという。
4. 長期的な時間軸を念頭に置きながら交渉する
その時点では不利な条件に見えても、長期的に見れば好条件かもしれないことがままある。点で考えるのではなく、その後のパートナーシップの時間の長さを加味して考えることが大切だ。
現時点での条件に時間の長さを掛け合わせ、トータルの面積で価値を考えることが重要になる。価格の交渉で決裂しそうになっても、時間軸や、その他の条件軸などの次元を増やして、多角的に交渉をつくり上げていこう。
以上、この4カ条は、パートナーシップ交渉のフロントに立つ者のみならず、ビジネスに関わるすべての人間にとって必要な「交渉の心得」だ。そして、その土台となっているのは、何かしらの卓越した専門的技術ではなく、徹底して相手の立場に立ち、その思いや価値観を理解しようとする姿勢なのだ。