彼は、これらの技術がもたらすポテンシャルを活かしつつ、潜在的な脅威を取り除くバランスのとれたルールづくりが必要だと述べた。
ピチャイは「AIの利用に一定の規制を設けるべきであることに疑いはない。ただし、どのようなアプローチが適切であるかは、今後検討を進める必要がある」と述べた。「企業は、新たなテクノロジーを投入する際に、その技術がどのように活用されるべきであるかの判断を、市場に丸投げしてはならない」と彼は主張した。
テクノロジー企業には、新たな技術が社会を前向きに変える目的で利用されるよう、監督する義務があるというのがピチャイの考えだ。
各国の政府がAIの規制に向けたルールづくりを進める中で、EUは米国よりも厳しいスタンスを打ち出し、公共エリアでの顔認証技術の利用を最大5年間禁止することを検討中だ。
ピチャイは顔認証技術を規制する場合、その妥当性の判断は政府が担うべきであるとの見解を示し、「各国の政府や規制当局がグローバルな基準を策定し、共通の価値観を持つことが必要だ」と述べた。
彼はまた、EUのGDPR(一般データ保護規則)を、AIのルールづくりの基盤とすることを提案した。さらに、AIの規制にあたっては単一の基準を全てに当てはめるのではなく、広範囲なガイダンスを設けることが必要だと述べた。
「AIを活用した心拍モニターなどの医療デバイスの場合は、既存の法の枠組みを活用したルールづくりが望ましい。一方で、自動運転技術のような新たな領域においては、政府はコストやベネフィットを考慮に入れた上で、適切なルールを新規で設けるべきだ」とピチャイは主張した。
グーグルは多岐にわたる領域でAIシステムの開発を進めており、そこにはグーグルアシスタントや医療診断デバイス、航空機の遅延を少なくするシステムなどがある。しかし、グーグルは競合企業とは異なり、顔認証ソフトウェアの外販は行っていない。
AIの運用のルールづくりにおいては、具体的なゴールを定めることが必須となるというのが彼の考えだ。「紙の上の行動原則だけでは意味が無い」とピチャイは続けた。
AI規制に実効性を持たせるためには、開発者らが説明責任を果たし、それを怠った場合には国際レベルで罰則が与えられる枠組みの構築が必要だ。EUのGDPRは、欧州以外に本拠を置く企業を罰則の対象とするものだが、ピチャイが主張するGDPRを基盤としたAI規制の推進は、理にかなったものと言えそうだ。