ホワイトストーンギャラリーのエントランス。木の風合いが生かされている。
今回も個展会場となった「ホワイトストーン・ギャラリー台北」は、建築家・隈研吾のデザイン。白を基調にして広々とした空間で、エントランスは木の温もりが感じられる。今回は、ベネチア国際映画祭に出展したVR作品とその素材となった原画のほか、絵画を中心に50点を出品した。
白を基調とした会場は、広々とした空間で小松作品に描かれた神獣の生き生きとした様子が見られた。
躍動するライブペインティング。和やかな空気は一変
開幕前日には、グローバルな金融機関UBSとホワイトストーン・ギャラリー台北との共催で、SVIP顧客を対象にしたイベントとして、ライブペインティングと内覧会を行った。UBSにおいて、台湾は世界で5番目の市場だという。
会場には意外にも若くて洗練された出で立ちの女性も多く、作品を背景にセルフィーを撮る姿が印象的だった。しゃれた服装に身を包んでいるが、気取った雰囲気はなく、会場全体には和やかな空気が流れていた。
ライブペインティングになると、その空気が一変し、少しだけ緊張感が漂った。小松はまず、6尺の金屏風に対面して座禅を組み、マントラを唱えて合掌し、深く礼をした。その後ろには、100本近くの絵の具が扇状に並べられ、VIPの観客たちがスマートフォンを片手に固唾をのんで見守っている。
小松の描き方は実に多様だ。チューブから絵の具をそのまま出して太い線を描いたかと思うと、手でパンと白い絵の具を箔紙に投げつけたり、ハケで叩きつけるようにつけた絵の具を手のひらで伸ばしたり。そうしているうちに、神社などで見る狛犬や龍のイメージを超えて躍動する神獣たちが目の前に姿を表すのだ。
VIPの観客を前で、ライブペインティングをする小松。観客には女性の姿も多かった。
台湾のVIPコレクターたちが語った「小松愛」
会場を訪れたVIPたちの声を聞くことができた。みな興奮気味に「小松愛」がどれほどかを語ってくれた。
2年半前に台湾で小松の作品を最初に購入したコレクターだという、台南の病院・璟馨婦幼醫院長夫人 王淑芬は「彼女の絵は、人を守ってくれる神獣が描かれ、ピースフルな作品なので、心安らぎます。前回のライブペインティングも衝撃を受けましたが、彼女の成長が感じられます」と話した。この日は、2歳と4歳の孫も一緒だったが、家族みな、小松作品が好きだという。「色彩がカラフルで喜びを感じるのです」
化学メーカーCEOのフェルディ・チェンは小松作品の「大和パワー」に魅了されているのだという。やはりチェンも2年前の個展で小松の存在を知ったが、VOGUE Taiwanなどメディアでも多く取り上げられ、今ではすっかり台湾で馴染みの日本人アーティストだそうだ。そして以下のように教えてくれた。
「私は46歳ですが、20~30代の若い世代にも知名度が高く、小松さんが好きでSNSなどでフォローしている人が多いんですよ。私のようなアートコレクターの間でも、もちろん広く知られています。台湾は日本の文化ととても近いものがあり、受け入れやすいのでしょう」
確かに小松美羽のインスタグラム (@miwakomatsu_official)は、すでに10.1万人フォロワーがおり、アジアを中心に外国人が80%を占めるという。