経済・社会

2020.01.16 13:30

小泉進次郎大臣の育休取得宣言を読み解く。霞が関を覆う「不夜城文化」を改革せよ


男性にも「半育休」が必要

まず、小泉大臣が育休取得時期を「産後3カ月」としたことについて、小室さんは「産後うつのピークは産後2週間から1カ月。孤独な育児とホルモンバランスの崩れが要因だが、睡眠時間が取れたら回復しやすく、危機的な状況に陥ることを防ぐためには適切な設定だ」として、取得時期について評価した。

小泉大臣は、その3カ月の間で2週間の育休を取ることになる。だが、その中には時短勤務やテレワークなどを含むとしている。例えば、役所で行う打ち合わせやレクチャーは、メールでの資料確認やテレビ会議で行い、副大臣や政務官に代理で行ってもらうこともあるという。それでしっかりと2週間分休んで育児に向き合う時間を確保できるのだろうか。

小室さんに筆者の疑問を投げかけると「男性の場合、女性のように産前からの休みがなく、妻の出産日も確定しているわけではない。『残務があるから休めない』とならないためにも、仕事を代わりの人に移行して残務をこなすためにも“半育休”という考え方は必要だ」と答えた。

逆に、女性の場合でも、職場に復帰する前には、労働時間を徐々に増やして行く“半育休”という考え方が認められつつあるという。法律で定められている育休制度においても、月80時間以内の臨時的な就労は認められ、育児休業給付金が支給される対象となる。

「属人的な仕組み」で回ってきた日本の政界

一方で、国会議員や大臣が育休や病欠など休暇中にバックアップの仕組みがない日本の政界に対して、小室さんは「24時間365日、本人が休まないことを前提に政治が回って行く『属人的』な仕組みで今日までやってきたこと自体が、国際社会から見たら恥ずかしい現状」と批判する。例えば、ノルウェーなどの北欧諸国では、比例代表制で次点の得票数の議員が代理を務めて業務を引き継ぐ制度がある。また、休んでいても遠隔投票ができる仕組みもある。

だが、日本では、国会議員や大臣など公職にある人が休暇を取ることを良しとしない風潮がいまだにある。小室さんは、内閣府など行政機関のほか、1000社もの企業の働き方改革コンサルティングを行ってきた経験から、政府や行政機関とのやりとりが多い民間企業ほど長時間労働を強いられているという傾向を見出している。

「霞が関には『不夜城文化』が根強く残っている。対民間企業であっても書類などを作成した上で印刷して届けさせるなど、アナログが基本。また国会前には議員からの質問を受け、答弁のために関連の部署が深夜まで待機しなければならず、その残業代は国民の税金が20億円も使われている。霞が関は長時間労働の震源地になっている。そしてその原因が永田町だ」と、厳しく批判した。

霞が関と永田町が、まず「隗より始めよ」で休める仕組みと空気を作っていくことが、私たちの働き方を変えることにつながるだろう。

そして、「議員であろうと属人的でアナログな現行の制度を根本的に見直す機会にしてほしい」と進言。今回、小泉大臣がメールやテレビ会議を使って公務を行う前例を作ることが、アナログな業務慣行の見直しにつながる効果を指摘した。

男性の育休取得率6%──。この国の悲しい現状をどう打開すれば良いのだろうか。

小室さんは「現状の日本の育休制度は『本人が申し出てくれば企業は断ることが出来ない』という制度になっているが、育休を取る男性に『パタハラ』が横行している中で本人の申し出制では限界がある」と指摘。さらに、「企業や組織側から、制度の対象となる人に育休取得をプッシュ型で打診しなければ変化はしません。そのためにも、法律により、企業側から育休取得を必ず周知することを義務化することが必須。これが真の働き方改革につながり、人材確保のための強みにもなるでしょう」と前進への道筋を示した。

文=督あかり

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