授賞式が早まったことで、当然ノミネート作品の発表も前倒しとなった。1月13日に発表となった、メインの賞である作品賞と監督賞のノミネートは以下の通りだ。
作品賞
「フォードvsフェラーリ」
「アイリッシュマン」
「ジョジョ・ラビット」
「ジョーカー」
「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」
「マリッジ・ストーリー」
「1917 命をかけた伝令」
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
「パサライト 半地下の家族」
監督賞
マーティン・スコセッシ「アイリッシュマン」
トッド・フィリップス「ジョーカー」
サム・メンデス「1917 命をかけた伝令」
クエンティン・タランティーノ「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
ポン・ジュノ「パサライト 半地下の家族」
このうち、最も注目が集まるのが作品賞の行方だが、アカデミー賞の前哨戦のひとつである昨年9月のトロント国際映画祭で、観客賞(ノンコンペティションの映画祭のため、観客賞が最高賞となる)を受賞した「ジョジョ・ラビット」が、早くからこれまで有力ではないかとされてきた。
というのも、昨年のアカデミー賞作品賞を受賞した「グリーンブック」が、このトロント国際映画祭の観客賞を得ていたからだ。過去にもその流れは少なくなく、2008年の「スラムドッグ$ミリオネア」、2010年の「英国王のスピーチ」、2013年の「それでも夜は明ける」もトロント国際映画祭で観客賞、アカデミー賞で作品賞に選ばれている。
10歳の少年の目を通して描いた戦争
さて、そんな「ジョジョ・ラビット」だが、やや異色の作品と言ってもよい。舞台は第二次大戦下のドイツ。ヒトラーユーゲント(ヒトラー青少年団)である10歳の少年の目を通して、ナチスの支配下にあった田舎町の人間模様が描かれていく。
主人公はヒトラーユーゲントとして活動する10歳の少年、ジョジョ (c) 2019 Twentieth Century Fox Film Corporation &TSG Entertainment Finance LLC
しかも、この作品がユニークなのは、戦争に対する風刺が込められた辛口のユーモアを交え、コメディとしてつくられている点だ(1月5日発表の第77回ゴールデングローブ賞でもコメディ・ミュージカル部門の作品賞にノミネートされていた)。
同じようにアドルフ・ヒトラーに模した人物も出てくるので、ちょうど、第二次大戦中、チャールズ・チャップリンがヒトラーをパロディにして描いた作品「チャップリンの独裁者」(1940年)に通ずるものも感じる。