経済・社会

2020.03.03 16:30

ビル・ゲイツ夫妻の慈善団体が「避妊」を支援するわけ


ナイロビのコロゴチョという貧しい大地区では、メアリーという名の若い母親に出会いました。メアリーは青いジーンズ生地の切れ端でリュックサックを作り、生計を立てていました。

幼い二人の子どもの世話をしながらリュックを製作している自宅に私を招き、メアリーは避妊薬を使う理由をこう話しました。「生きていくのは大変なので」

私が夫も賛成しているのかときくと、こう答えました。「彼も同じ思いです」

その後も旅する中で、目的は何であれ、避妊薬が欲しいという声を多く耳にしました。全ての母親に子どもを亡くした経験がある地域や、出産で命を落とした女性の多くいる地域もありました。

既にいる子どもさえきちんと育てられないのだから、もう二度と妊娠したくないと思っている母親に多く出会いました。私が別の目的のために訪問しても、女性たちは常に避妊を話題にします。それがどうしてなのか、次第に状況を理解するようになりました。

私がデータでしか知らなかったことを、彼女たちはまさに体感していたのです。

2012年のデータによると、経済的に困窮している69カ国では2億6000万人の女性が避妊薬を使用していますが、一方で2億人以上の女性が避妊薬を使用したくてもできない状況にあります。発展途上国では非常に多くの女性が、望む時期に妊娠できなかったり、頻繁に妊娠して体に負担がかかったりしているのです。

発展途上国の女性が出産間隔を3年以上空ければ、生まれた子どもの一年後の生存率は2倍近く上がり、5歳の誕生日を迎えられる確率は35パーセント上がるとされています。避妊薬の普及が必要である十分な理由です。しかし、理由は他にもあります。


避妊サービスを提供するマリー・ストープス・インターナショナルの出張プログラムでセネガルの診療所へ。(C)Bill & Melinda Gates Foundation / Frederic Courbet

家族計画こそが国を貧困から救う


1970年代から続けられている、公衆衛生に関するある研究があります。バングラデシュの村々の半数の家庭に避妊具を提供し、もう半分には提供しなかったところ20年後、提供を受けた家庭の方が母親の健康状況が良好で、子どもの発育も良かったそうなのです。またそちらの家庭の方が、家計も豊かで女性の収入も多く、子どもが高い学歴を身につけていたそうです。

理由は簡単です。女性が妊娠のタイミングや間隔をコントロールできれば、より高い学力を身につけ、より多くの収入を得て子どもを健康に育てられるからです。

また子ども一人一人に食事を与え、世話をし、豊かに生きるための教育を受けさせるための時間とお金を、より多く手に入れられるからです。子どもの可能性を引き出せば、将来貧困に苦しまずにすみます。

そうして各家庭も国全体も貧困から抜け出せるのです。実際、過去50年で貧困から脱した国の全てで、避妊が普及してきました。
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