私たちはどこで、どのように買い物をするようになるのだろう? 顧客を引き留めるために、小売業者はどんな手を繰り出すことになるのか? そうした問いを念頭に、新しい10年の「小売り予想図」を描いてみたい。
1.新しい店舗形態が広がる
数十年前の予想では、私たちは今頃、密閉式キャビンのバブルカーで移動し、特別仕様の店舗で買い物をしているはずだったが、現在はそうした夢は色あせている。むしろ、今後増えそうなのは、米アマゾンのレジなし店舗「アマゾン・ゴー」だ。
アマゾン・ゴーでは、棚から商品を取るとセンサーで感知されるため、客はレジで精算待ちをせず、そのまま店を出るだけで課金される。米国ではアマゾンに続いて、ベンチャー企業のグラバンゴ(Grabango)とジッピン(Zippin)もレジなし店舗サービスに乗り出している。
人気商品を選んで販売するタイプの店舗の場合、こうした形態は開設しやすく、人件費も大幅に抑えられそうだ。
2.閉店ラッシュが続く
衣料品業界などの情報を提供するソーシング・ジャーナルのまとめによると、米国で19年に閉鎖された店舗数は1万1250店と記録的な多さだった。18年も5864店、17年も5000店余りが閉店している。
大きな債務を抱える小売業者はまだ何社かあり、生き残るためにはその軽減に向けた交渉が必要になると思われる。その場合、ビジネスモデルを変えない限り、これらの企業も一部店舗の閉店に踏み切る可能性が高い。
とはいえ、大手の小売業者は客に入ってきてもらう「ドア」が必要なので、やはり店はできるだけ開いていたいというのが本音だろう。
3.DTC店舗が増える
DTC(Direct to Consumer=消費者直販型)取引はかつてなく増えている。DTCは米シューズメーカーのナイキとニューバランスが先鞭(せんべん)をつけたもので、販売方法としてそれを選ぶ企業が増える傾向は今後も続きそうだ。
従来型の店舗の方は、顧客ロイヤルティーを保つために、独占販売のブランドやプライベートレーベルの取り扱いを増やす必要に迫られるだろう。
4.オンライン売上高は引き続き伸びる
インターネットは成長の源であり続ける。アプリはますますユーザーフレンドリーになっているし、購入を検討している商品をユーザーに思い起こさせる機能を備えたものも多い。当然、そうした穏やかなリマインダーが実際の購入につながることもあるだろう。通販サイトの側も、客がそれぞれ自分に合った買い物ができるように、パーソナライズが進んできている。
また、米スターバックスに倣って、オンラインで事前に注文して店舗で受け取れるといった、便利なサービスを新たに提供する店舗も出てくるだろう。