一般に韓国の人たちは、日本人より出国率が高く、海外旅行熱は旺盛、本来、旅行に関しては成熟した消費者といっていい。ところが、昨年起きたことは理解に苦しむものだった。
とりわけ、自国民の日本旅行をお互いけん制しあう彼らの同調圧力の高さには、我々の想像を超えるものがあった。
とはいえ、ある韓国通の知り合いが言うには、「数字にはまだ現れてはいないものの、回復に向けた動きもみられる。いま日本を旅行で訪れている韓国の人たちはインスタグラムなどのSNSでの投稿は控えているが、出張に来た人たちの中には、仕事=自分の意思で来たのではないという言い訳が立つからと、SNSの投稿を始める人もいる」そうだ。
このような複雑な振る舞いは理不尽で合理的ではないと考える人たちは当然いるだろう。時間はかかるかもしれないが、いつの日か、何ごともなかったかのように溶けていく気がする。
日本旅行をボイコットしたぶん、極東ロシアのウラジオストクを訪れる韓国客は急増した
間違いだらけのインバウンド
ともかく2019年は、政治が観光に与える影響を痛感した1年だった。だが、こうしたことは初めてのことではない。訪日韓国人の政治含みの動きは、東日本大震災後の数年間にもみられていたのである。
震災が起きた2011年、日本を訪れる外国人観光客は姿を消した。それでも、翌年になると、タイ(前年比 79.8%増)や台湾(同 47.5%増)はいち早く回復した。
一方、回復が最も遅れたのは韓国だった。ようやく震災前の2010年と同じ水準に戻ったのが2013年。海外旅行が始まったばかりの中国にまだ現在ほどの勢いがなかった当時、訪日外客数1位の常連だった韓国では、メディアが福島原発事故の不安を執拗に報じ続け、国民もその「風評被害」に影響されたことから、日本旅行にブレーキがかかっていたことは、日本政府観光局の訪日外客統計のプレスリリースでも指摘されている。
2019年にも、韓国政府は福島原発の処理水に関する説明を日本政府に求めており、「輸出規制強化への対抗措置の可能性があり、汚染処理水の影響を国際問題化して日本をけん制する狙いがある」(東京新聞2019年8月20日)とされる。
「東京五輪・パラリンピックで選手に提供される食事を問題視したり、日本の輸出規制強化への反発も絡んで大会ボイコットの主張も出たり」(同上)といった極端な世論が飛び交う以上、影響を受ける人たちが出てくる人がいるのも無理はないのかもしれない。