時短では手に入らない、料理における「熱の力」とは

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では、退化とは? 特に目的もなくテレビを見たり、パソコンの前でネットフリックスに釘付けになったり、またはスマホでゲームをしたり……。しかし、それらをしながらでも料理をすること、加熱をすることは可能です。

大事なのはオーガナイズです。休みの日をうまく使って、日頃の「調理」または「加熱」を先にしておくのです。食材の下ごしらえを余分に済ませておいて、平日加熱に時間を使うもよし。時間のかかる出汁を作りおきしておき、平日は調理に時間をかけるもよし。

トータルで火にかける時間が増えれば、素材の味を引き出せるので、間違いなく減塩もできるし、調味料を使う量も減らせます。加熱をしたことによって食材が柔らかくなることで胃腸の負担も減らすことができます。

また火の入った料理は保存もききます。大量に作っておけば、少しずつ味付けを変えて使うこともできるので、おかずの種類に悩んでる人も救われるのではないでしょうか?



お婆ちゃんの料理、郷土の料理と言われる昔ながらの伝統料理が、なぜ懐かしく僕らを優しく包み込んでくれるような料理だったかと言うと、火を付けるのが難しい時代に生まれた、熱を上手に使った料理だったからだと思います。

昔は現代のようにワンタッチでガスがつくこともなく、竃の火を付けることは容易なことではありませんでした。思えば僕の実家は、薪でお風呂を炊いていたのでそんな名残も体験しましたが、一度火をつけた薪は大切に繋ぎ、火事にならないように細心の注意を図りながら扱っていました。

ヨーロッパでは、パン屋さんの釜が活用されていました。近所の主婦が食材を鍋の中に入れて、パンを焼いた釜の余熱で料理をしていたほど、火は貴重なものだったのです。

冬には、栄養素が高く、免疫力の改善やデトックス、抗酸化作用などがある根菜がたくさん出てきます。一年の終わりと始まり、心地よく過ごしたいこの時期こそ、ゆっくり加熱をして、胃腸に優しく取り入れていきたいもの。便利さを享受しつつも、もう一度火を使えるありがたさや、熱を伝える大切さを今一度見直して見てはいかがでしょうか?

文=松嶋啓介

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