料理は家事なのか? シングルマザー率6割のケニアを救う「手作りケーキ」

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ある人からこんなことを言われた。

「クックパッドのミッションは、女性の社会進出を阻めている」

なかなかショッキングなセリフだった。「料理を楽しもう」と言うと、「おうちで一生懸命料理をつくりましょう」というメッセージになり、それはつまり「女性を家に閉じ込める」と解釈されるのか。

そうか、料理は家事なのか。料理は女性を家に閉じ込めてしまう家事労働でしかない。世間ではまだそう思われているんだ。

でも私にはけっしてそうは思えなかった。料理にはもっともっといろんなものを動かす力があるはずだから。
 
そんなモヤモヤした気持ちでいたところ、社内で海外事業を展開している人から「今、ケニアの女性が熱いよ」というメッセージが届いた。

実はクックパッドは日本だけでなく、海外でも広く展開している。2014年から本格的に海外展開を進め、スペイン、インドネシア、レバノン、ロシアなど、世界10カ国に拠点を構え、料理を楽しみにするためのきっかけを増やそうと、それぞれの国や地域の食文化に根ざしたコミュニティをつくり、2018年11月末時点で70カ国、25言語にサービスを展開している。

早速、クックパッド・ケニアのフェイスブックコミュニティをのぞいてみた。投稿されている記事を見てみると、たしかにとってもエネルギッシュで料理愛に溢れている。料理教室の案内やコンテストの告知も頻繁に出ていて、コミュニティの持つ熱いパワーが伝わってくる。

「わ、この料理愛はいったい何!?」

元来好奇心の塊で、フットワークの良さと体力だけは自慢の私。ケニアまで飛んで行ってしまった。ちょうど半年前、6月頃のことだ。

ケニアの街にはケーキ屋さんがない

そこで私は、ワンジュク・ムーゴという女性に出会った。彼女はコミュニティマネージャーとして、料理愛に溢れるクックパッド・ケニアをともにつくりあげた立役者だ。

ケニアは経済発展の恩恵を受け、所得も増加し、人々の生活も豊かになってきた。大型モールが登場し、中にはファストフード店が続々と進出。さらに車の普及もあって人々が運動不足になり、過体重や肥満が増えてきている。そのため元々料理好きだったワンジュクは、特に子どもたちに健康的な食事を食べさせたいという思いから、料理をつくる楽しみを広げようとコミュニティを盛り立ててきてくれた。
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文=小竹貴子 構成=加藤紀子

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