デジタル領域でのノウハウがリアルに活きてくる
小泉:本を読んでいて嬉しかったのは、いま自分たちの心を信じてハートドリブンな経営をしていることが「間違いない」って、背中を押してもらえたような気がしたんです。
塩田:でも小泉さんこそ、アカツキの社外取締役をしてくださっていたとき、そんな感じでしたよ。経営会議で新しいゲームや「アソビル」の企画を説明していると、いつも「Go! Go!」みたいなノリでしたよね。投資の規模が大きくなるとこっちも不安になるところもあるのに、「もっとアクセル踏んでいいんじゃない?」みたいな感じで。
小泉:そうそう。アソビルの計画とか、めちゃくちゃ面白そうだったもん。だから「やっちゃえ!」って。だって、「やりたい」気持ちがあるなら、やらせてあげたいじゃない? やってみてどんな結果になったとしても、絶対に次の成功につながるから。僕はその気持ちの熱量を見ていたんです。熱量が小さければ、やらないほうがいい。でも大きな投資が必要なのはわかってるから、その時点でだいたい腹は括ってるはず。そこまできたらもう、やるしかないじゃない? 基本的にはそんなふうにリスクを取っている人を応援したいよね。
塩田:だから僕にとって、小泉さんだけは「先輩」って感じなんです。基本的には、ビジネスに歳なんて関係ないと思っているから、あまり上下関係を意識しないんだけど、小泉さんは「兄貴」って呼びたくなるんですよ。なんか、優しく諭してくれるからなのかな。かといって、偉ぶっているわけではないし。
小泉:だって、同じ人間じゃん(笑)
塩田:そう、だからすごく信頼できるなって。
小泉:やっぱり前提にあるのが、「インターネットは個人をエンパワーメントする」という信念なんだろうね。ミクシィもメルカリもロジカルに考えてきたことは確かだけど、最終的には感覚で「絶対にこれだよね」と、心の赴くままに決めてきた。そこでは個人が持っている「やりたい」という思いが絶対なんですよ。だからそこは無条件で応援したい。
塩田:小泉さんにとってある種、「個人をエンパワーメントする」というのが、キャリアの
軸なんでしょうね。もしかしたら、アントラーズもそうなのかもしれない。
小泉:そうかも。プラットフォームではなくコンテンツという意味では、これまでになかったチャレンジでもある。ただ、サポーターとの関係性や、街づくりにも関わると考えると、サッカーチームもSNSっぽさがある気がしていて、チームをプラットフォームとして捉えると、新しいことができるんじゃないかと思っているんです。
塩田:僕らも東京ヴェルディに経営参画することになって、アソビルも含めて「エンタメ×テクノロジー」でリアルの領域に取り組みはじめているけど、デジタルの領域でPDCAサイクルを回しながらチャレンジしてきたことが、リアルに活きているんですよ。
小泉:リアルとデジタルはまさに融合していくだろうね。
塩田:ですよね。だからすごく面白い世界になってきたなぁって。そういう世界観で、小泉さんはこれからどんなことに取り組もうとしてます?
小泉:これからますます、地域の課題をテクノロジーで解決する時代になっていくんだろうけど、そこにたとえばゲーミフィケーションの要素を盛り込んでいけば、生活はもっと楽しく便利になるんじゃないかなと考えています。そういう施策をどんどん提案していきたいんだけど、僕が選挙に出るわけにもいかないし……。
塩田:いいじゃないですか、出てくださいよ!
小泉:いやいや(笑)。でも実際のところ、サッカーのクラブチームって実質的に自治体とほぼ二人三脚でやっていくことになるんですよ。だから僕はアントラーズを通じて、鹿島という地域をさまざまな実験ができる場にしていきたいな、と考えていて。
写真=Gettyimages