現在も音楽事務所やレコード会社に所属せず、セルフプロデュースにこだわる理由についてこう語った。「BADHOPはスピード感を大事にしています。レコード会社などは、日本人の良くない習慣が詰まっていると考えています。音楽を生業にするにはクリエイティブでないといけないにもかかわらず、会社員だから、どうしても会社員的発想になってしまう。意思決定も複雑で、スピード感もない。自分たちは、今日出来た曲を数日後にミュージックビデオを撮ってリリースするくらいのスピード感を求めています。でも、レコード会社に所属すると、なかなかそのスピード感は許されないと思います。また、セルフプロデュースだと自分たちで100%コントロール出来ることが強みですね。単純に自分たちで情熱を持って、プロジェクトに全員が本気で向き合っているので、全員が同じ気持ちでプロジェクトに向き合える。ただ、セルフプロデュースだと第三者の目線がなく、客観視できない欠点があり、第三者の目線で自分を見ることが僕の人生のテーマだと思っています」。
日本のレコード会社は、現在世界的に主流の音楽ストリーミングサービスへも当初は消極的だった。また、BAD HOPがフィールドとしているヒップホップのなかでもトラップと呼ばれる音楽は、特にアメリカでは楽曲リリースのサイクルが非常に早い。そこにキャッチアップしていくためには、迅速な決断が欠かせない。
取材時、彼は目の前にあるペットボトルを目的地にたとえ、「たとえばペットボトルを手にするのに、一直線に伸ばせば最短で届く。なのに、みんな右や左から腕をまわして取ったりする。一直線に手を伸ばせば簡単じゃないですか。それと一緒で、まずは目標を決めれば、そこへ最短でたどり着く道筋は誰でもわかること。まず目標をしっかり決めていないから、右往左往する。日本の音楽会社等も含め、もっとシンプルに物事を捉えることが出来れば成功には早くたどり着くと思います」と指摘した。
彼の思考法は、目的までいかに最短で到達するかという非常にシンプルなものだ。こうしたことを起きている間、四六時中考え続けているという。それはもはや努力などではなく、体に叩き込まれ、染み付いたものだという。また、売れるためにはどうしたら良いかを、若手に教えるのも課題のひとつだという。
ヒップホップは、ラップ、ビーボーイング(ブレイクダンス)、グラフィティ、DJの4大要素で構成されるカルチャーだ。「ヒップホップは、音楽ジャンルではなくカルチャー。僕らはこれを絶やさないようにやり方の基盤を整えていかないといけないと思っている。ヒップホップで食べていけるように若い子たちに教えていかないといけない」とも語る。