少年院から世界へ、BAD HOPのYZERRが語るセルフプロデュース術

(写真)YZERR

「アメリカンドリームはもはや存在しない」とアメリカ研究に関わる人たちは指摘する。ただし、アフリカ系アメリカ人にとってのエンターテインメントやスポーツの世界をのぞいては。たとえば、ラッパーのジェイ・Zは違法薬物の売人から現在では保有資産約9億ドルのミリオネアへ、アメリカでもっとも危険な都市のひとつと言われるカリフォルニア州コンプトン出身のラッパー、ケンドリック・ラマーが昨年ピューリッツァー賞の音楽部門を受賞したように、エンターテインメントやスポーツの世界では、生い立ちに関係なく、自らの才能で経済的、社会的な上昇を可能にする。

また、アメリカでは2017年、ヒップホップ/R&Bが初めてロックの売上を追い抜き、名実ともにメインストリームになった。

ジェイ・Zやケンドリック・ラマーと同じような道をたどるのが、弱冠、23歳にして昨年武道館公演を大成功させたヒップホップグループBAD HOPだ。武道館公演チケット発売日には、販売サイトのサーバーがダウンしたほどの人気を誇る。BAD HOPは、神奈川県川崎市川崎区出身のT-Pablow(ティーパブロ) 、YZERR(ワイザー)、 Tiji Jojo(ティジィ ジョジョ)、 Benjazzy(ベンジャジー)、 Yellow Pato(イエローパト)、 G-K.I.D(ジー キッド)、Vingo(ヴィンゴ)、 Bark(バーク)の8人の幼馴染のラッパーからなる (Vingoだけ東京都育ち)。

この若さにして武道館、そして来年3月には横浜アリーナでのライブが決定していると聞けば「大手レコード会社や音楽事務所の力だろう」と思うかもしれないが、彼らの特筆すべき最大の特徴はすべてをセルフプロデュースで行っている点だ。その中心が、BAD HOP の”頭脳”とも言われるYZERR。今回、セルフプロデュースで爆速で武道館を駆け抜けた彼の思考法に迫った。

逮捕、そして少年院へ

彼らは、神奈川県川崎市川崎区の工業地帯で生まれ育った。そこは貧困と暴力、薬物が支配する街だったという。その生い立ちは、父親が事業で失敗し多額の借金を抱え離婚。母親に育てられるも一家心中を図ろうしたこともあったという。想像を絶するほど壮絶で、TBS『クレージージャーニー』で2週連続放送された他、磯部涼の『ルポ 川崎』(サイゾー、2017)も話題となった。YZERR自身も双子の兄、T-Pablowとのユニット、2WINの「PAIN AWAY」で歌っている。


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文=本多カツヒロ 写真=小田駿一

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