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電通総研内のクリエイティブシンクタンクによる連載「NEW CONCEPT採集」

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「Less is more.(より少ないことは、より豊かなこと)」という美学は、ドイツの建築家ミース・ファン・デル・ローエが提唱し、さまざまな分野のデザイナーに影響を与えた。

しかし度を越えた引き算は何も残さない。引き算ではなく、対象をはだかにすることで、商品・サービスの本質、企業のDNAが見えてくるのだ。


いいなと思った洋服に袖を通してみるとまったく似合わなかった経験、誰しも一度はあるのではないでしょうか。自分に似合う服を選ぶセンスを養うことと、自分を理想の体形に磨き上げることで、初めてすてきなスタイルをつくることができますよね。容易なことではありませんが、これは良いデザインをつくる上でも、全く同じことが当てはまると考えています。

私はアートディレクターという肩書でこれまでさまざまなデザインの仕事に取り組んできましたが、デザインの注文をいただいても、ファストフード店のようにいつでもすぐに出せるわけではありません。デザインをつくる作業は、オーダーメイドの洋服を仕立てることだと想像してみてください。

まずはきちんと採寸して、希望の生地や仕上がりイメージを聞いて、初めてデザインを考えることができます。しかしながら、商品やサービス、要は体そのものにきちんと魅力がなければ、どんなにすてきな洋服を頼んだとしても着こなせないでしょう。逆に、斬新でかっこいい洋服をデザイナーが仕上げても、依頼主に似合うものでなければ、それはかみ合いません。

そこで必要になるのが「はだかを見ること」です。依頼主がはだかになったとき、何が残るのか。それを見つけるために着ている服を1枚ずつ脱がしていきます。「はだか=恥ずかしい」と感じるかもしれませんが、自分の本来の価値を再認識するには最も効果的な方法です。

着ぶくれしていたけれど、実はいい体していますね。このはだかはまだ世に出せないので、トレーニングをしてみましょう。そんな声が聞こえてきて、初めてデザインをつくる第一歩が踏み出せます。

広告での事例を見てみます。「iPhone 6で撮影」という文字通りiPhone 6で撮影した写真だけが大きく引き伸ばされたポスター広告は、とても新鮮でした。新型iPhoneのパワーアップした写真機能をそのまま示したその潔いはだかっぷりは、Appleの自由でクリエイティブなイメージを再認識させました。

iPhoneの写真機能がデジタルカメラを越える瞬間、つまり体が仕上がった瞬間に、見せつけるようにはだかで飛び出してきたのです。

文=古谷 萌 イラストレーション=尾黒ケンジ

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