GAFA・BATに対抗、NAVERが描く「AI研究ベルト構想」とは

昨年のDEVIEW2018(NAVER)

電撃的な経営統合を発表したヤフーとLINEは、日本やアジアをリードするAIカンパニーを目指すと宣言した。ヤフーやLINEの人工知能(AI)開発の動向は日本でも広く報じられているが、LINEの親会社であるNAVERの動向も非常に興味深い。同社の内部の人間と繋がりが深い韓国誌記者は言う。

「これまでポータルサイトとして有名だったNAVERだが、昨今では完全にAIを始めとしたテクノロジー企業として生まれ変わろうとしている。ベンチャーや人材への投資を大規模に行っており、海外進出にも積極的だ」

NAVERのAI開発および投資の動向は多岐にわたるが、今年10月末に行われた開発者会議「DEVIEW」では、重要なグローバル戦略もひとつ発表されている。米中の大手IT企業(GAFAやBATなど)に対抗するため、アジアと欧州を結ぶ「AI研究ベルト」を構築していくというものだ。

これは主にビジネスを展開している地域である韓国、日本、ベトナムなど東南アジア、そしてフランスなど欧州の研究ネットワーク網を連携・拡大しながら、現地の学界やスタートアップ、研究機関と協力し、新たなAI人材の流入や投資を増やしていく計画である。

NAVERがベトナムを東南アジアにおけるAI研究の中心に据えた理由は、AI開発を支える人材(約10万人)が多いという理由からだ。急速な経済成長を遂げている東南アジア各国のなかでも、中心国になりつつあるという事情が考慮された。


AI研究ベルト構想(NAVER Lab)

またNAVERは2017年6月、米ゼロックスから仏・グルノーブルに拠点を構える研究所「ゼロックス・リサーチセンター・ヨーロッパ」(XRCE)を買収し、「ネイバー・ラボラトリーズ・ヨーロッパ」を設立している。2018年からは、同研究所を通じて約260億円を投資。欧州現地のAIスタートアップ育成に乗り出している。

11年28日からは、仏・グルノーブルでAI学術ワークショップ「AI for Robotics」も開催予定だ。同イベントには、オーストリア・グラーツ工科大学、仏・国立応用科学院(INSA)、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)など欧州の主要大学のAI&ロボティクス研究者たちが参加する。

サムスン電子出身、またMITでチーターロボットなどの開発を行っていたNAVER Labのソク・サンオク代表は、長期的に見た際にAI研究ベルトはGAFAやBATの“技術的覇権”に対抗する新しいグローバル軸になると明言。特にAI人材育成の重要性について強調している。

ヤフーとLINEの経営統合を出発点として、日本と韓国、ひいてはアジアや欧州にまでおよぶ大きなAIネットワークは強化されていくのだろうか。引き続き注目していきたい。

連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
過去記事はこちら>>

文=河鐘基

ForbesBrandVoice

人気記事