Wpiasは、ディープラーニングを採用した世界初の火傷・怪我専用のアプリケーションだ。火傷を負った際に患部の写真を撮影してアップロードすると、AIが具合や状況を自動で分析。その後、分析結果を元に専門医からオンライン上で診断や相談を受けることが可能となっている。
なお、Wpiasは火傷のビックデータを学習済み。他の火傷と自分の火傷を比較し、詳細な怪我の状況をAIが説明してくれるチャットボット機能も搭載されている。
アプリに蓄積されたデータは、Azureの電子カルテシステムに保管される。火傷の傷も個人情報であるためセキュリティには万全を期す必要があるが、Azureは米国医療情報保護法(HIPPA)や健康情報信託連合(HITRUST)などの基準をクリアしている。
FineInsightがAzureをパートナーとして選んだ理由のひとつには、「セキュリティ面の強さ」があるのだろう。なお、マイクロソフト側は自社のグローバルネットワークを通じて、火傷治療のためのインフラが整っていないアジア地域を中心に、Wpiasの進出を支援していく計画だとしている。
インドネシア・ジョクジャカルタ特別州が主催するeヘルスケアシステム構築事業にも参加しているFineInsightは、現地で病院や保健所と連携してeヘルスケアシステムを構築し、医療データの収集に尽力。収集されたデータは、ジョクジャカルタの医療保険制度に反映される予定である。
火傷に特化した判別・治療サポートにAIを使うという非常にユニークな発想とともに、アジアやグローバル市場に目を向けているが、そのマーケティング方法は非常に独特だ。従来であれば、同分野の企業は病院を中心に営業活動を行っていたが、同社では学界や協会を中心にサービスを紹介して回っているという。
理由は「より質の高い病院」を選定しサービスを提供するため。サービスが順調に成長するためには、ただ売りつけるだけではダメで、使い手や協力者とのシナジーも重要という判断からだ。今後、火傷や皮膚病の発病率が高いオーストラリア、市場規模が多く協力企業がすでに進出している中国を中心に市場攻略を進めていく。
現在、実用化されている人工知能のほとんどは“マニア”(狭いAI)で、いずれも限定された用途において高い精度や効率を発揮している。ニッチだが普遍的、そして誰も気づかなかった用途にAIを掛け合わせていく企業が今後も増えていくはずだ。
連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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