AI通信「こんなとこにも人工知能」

Stanford Human-Centered AI Instituteのジョン・エチェメンディ(左)、 リー・フェイフェイ(右)(Getty Images)

人工知能研究の世界的権威であるリー・フェイフェイ氏らが中心となり、「人間中心のAI研究所」(HAI、Stanford Human-Centered AI Institute)を設立することが3月中旬に発表された。過去にグーグルを辞めたリー氏が大学に戻り、次はマイクロソフトと手を組むという点も大きな話題だが、何よりHAIの今後の活動は、AI産業にとって非常に注目すべきものとなるかもしれない。

HAIは、人類社会および人間の生活に、AIがいかに肯定的な影響を与えられるかにフォーカス。人間を中心としたAI技術、およびアプリケーションを研究していくとしている。例えば、自動化により人間の仕事がどれくらい奪われるか、またスマート機器が人間の生活にどのように影響を及ぼすかなどを評価していくという。

また、昨今問題となっている性別・人種に対して偏見を持つアルゴリズムや、医療・教育・司法制度などに介在する人工知能の問題も掘り下げていく。前述したが、HAIはマイクロソフトAI研究所との協力も明かしている。

HAIは、スタンフォード大学に所属する200人の教授と研究者で構成される。諮問委員会のメンバーも、エリック・シュミット氏(グーグル元会長)、リード・ホフマン氏(リンクトインの共同創設者)、マリッサ・メイヤー氏(ヤフー元CEO)、ジェリー・ヤン氏(ヤフー共同創設者)、有名投資家ジム・ブレイヤー氏など、とても豪華な顔ぶれだ。また、ビル・ゲイツ氏が最近行われた最初のフォーラムで講演をしたとの情報もある。

もともと、リー氏はスタンフォード大学の元副学長であり、哲学者でもあるジョン・エチェメンディ氏(John Etchemendy)氏と組んでHAIの立ち上げを用意してきたという。今回のメンバーのなかには、人文系、医学系、芸術系の教授陣も加わっているようで、人工知能というツール、またそれが及ぼす影響を、単純な効率化や合理化の範疇にとどまらず、多角的に分析していこうという意思がうかがえる。

人工知能はビジネスのツールとして注目が集まり、IT企業などを中心に開発に拍車がかかる一方で、倫理的な問題を始め、人間および社会に対するデメリットも次々と表出している。

ここ数年では、「AIの説明化性」に関する論文が急増しているとの統計もあるが、それらの現象も、AIが陰陽両側面において社会に多大なインパクトをもたらしうると期待・懸念されている証拠となるだろう。

人工知能を多角的な視点から分析・評価する枠組みが必要不可欠な時期に差し掛かっており、おそらく今後HAIのような組織は増えていくはずだ。

連載 : AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河 鐘基

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