ビジネス

2019.11.29 16:30

外の声を聞け。『キャズム』著者が語るデジタル時代の成功法

ジェフリー・ムーア

ジェフリー・ムーア

ビジネスでも実生活でもデジタル化が進み、変化のスピードが加速している。行き交う情報が増え、グローバリゼーションが広がり、世界がコンパクトになった中で、企業は生き残りをかけ変革に挑んでいる。

「デジタル時代の本質を見誤ると、破壊的プレイヤーに交代を強いられることになる──」

こう話すのは、米国の経営コンサルタントであり、『キャズム』の著者として知られるジェフリー・ムーア氏だ。

企業はいかに変革に取り組まねばならないのか。12月に来日を控える同氏に話を聞いた(後編は11月30日公開)。


──現在ビジネスのキートレンドについて、どのように見ているか。

21世紀に入り約20年になりますが、この間に直面している大きな課題は、「消費者主導型のビジネス体系への変化」と「デジタルトランスフォーメーションの台頭」の2つが挙げられるでしょう。ビジネス界は、その対応に追われています。

デジタルトランスフォーメーションの発達によって、21世紀は、「クラウド・コンピューティング・システム」と「モバイル・コンピューティング・システム」が世界のビジネスを動かすようになりました。そうした変化に伴って、より多くの情報を手にできるカスタマーにパワーがシフトしています。

一方、企業側はそうした動きを理解・吸収し、何とか対応しようとはしているものの、元々クラウド・システムが先に来るのか、モバイル・システムが先に来るのかというような区分けでシステムデザインされているわけではないので、特にIT業界は現在のキートレンドの対応に苦戦しているようです。

ビジネスの面でいえば、サプライヤー(製造者)から消費者にパワーシフトが起きている中で、サプライヤーは消費者の要望や希望動向に、より注意を払わなければならなくなりました。

セールスの前に消費者動向を調査し、それに合わせたマーケティングを行うのはビジネスとして必須のことです。ただ、現在、特にサービス業界が直面している問題は、販売後にも消費者の関心事や趣向に目を向けたマーケティング活動を実施していかなければならないという点です。

日本は従来から、消費者の変化に即座に対応するマーケティングを行う傾向があり、米国よりは比較的無理なくシフトしていくことができると思いますが、それでもこれまでと異なったビジネススキルが要求されるという点で、企業への負担は大きなものになりそうです。

──日本に対する見方は?

日本はビジネスのコラボレーションやカスタマーサービスという点において、世界でも冠たる地位にあることは紛れもない事実です。日本が今まで培ってきたカスタマーサービスを守りながら、いかに時代の流れに沿ったイノベーションやトランスフォーメーションを取り入れて行くかということが、今後の大きな課題になるのではないでしょうか。

1980年代から90年代にかけて日本はビジネスの黄金期を迎えていますが、その手法はあくまでも一企業、あるいは関連会社による協業で、現在の形体とはかなり異なっています。その頃と比較すると、現在のイノベーションは、異業種とのコラボレーションを含め、もっとオープンなエコシステムという形で推進していると言えます。
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編集=谷本有香 翻訳=賀陽輝代

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