──その変化は、どの業界でも起きている現象か?
一概にそうとは言えません。たとえば、オイル、ガス、鉱業、造船などの重工業を筆頭とする“直接顧客と接する必要のない産業”では、まだオールドモデルが推進されています。
しかし、カスタマーサービス、メディア、広告など、カスタマーが多くの「情報」を得て「力」を持てる業界では、エコシステムを取り入れなければ生き延びていけないという現象が起きています。そしてこうした業界では、時として社内の管理職や上司の声よりも、外部の声に耳を傾ける必要があります。
──このトランスフォーメーションを確実なものにするには、どのようにしたらよいのでしょう。
この点について私がクライアントに提案するのは、パフォーマンス、プロダクティビティ、インキュベーション、トランスフォーメーションという4段階のゾーンの研修実施です。
まず1つ目の「パフォーマンス」は、クライアントの仕事が、オールドモデルに属しているいないに関わらず、全てのビジネス・ファイナンスに不可欠な生産性、効率性ついて学ぶ、あるいは再認識するための研修です。
続いて、プロダクティビティー(生産性)。ファイナンス、IT、HRなどの分野が関わるこのゾーンでは、現在はオールドシステムだけで運営しているけれど、それと同時にニュー・システムを取り入れる準備を始めているかという問いかけをする場を提供します。
1と2を完了した後にくるのが、インキュベーション。つまり、新規事業成長促進です。これは、いわゆるシリコンバレーでいうイノベーション研修で、チームを組んで「どのようにインキュベーションを実施活用するか」を学びます。
それらの3段階を通過したあと、最後にくるのがトランスフォーメーション。ここでは、次の世代を見据えたうえで、現在のジェネレーションのパフォーマンスゾーンにいかに取り入れるかという研修となります。これは内的にも外的にもとても混乱を来し、非常に大きなチャレンジを要する作業となります。
──今までのトランスフォーメーションの成果として、日本の大企業が学ぶことができる米企業の事例はあるか。
1990年代、ルイス・ガースナーという人物がIBMで行った改革がそれに該当するでしょう。彼は早くも当時からトランスフォーメーションの必要性を唱えていて、「製品」より「サービス」、「ハードウェア」より「ソフトウェア」へという移行の重要性を認識するよう、改革を促しました。
もちろんそれについていけない人も多く、そういう人たちは結局IBMを去りました。改革の必要性を理解し、新しい企業方針についてくことができた人たちはが内に残り、企業の繁栄に尽力することができたわけです。