そんなわけで2050年には、スーパーの棚には機能性食品が並ぶことになるようだ。ベビーフードだけでなく、あらゆる人々、つまり女性向け、男性向け、高齢者向けのカスタマイズ商品が売られるのだ。食品科学は各「個人」に最適な栄養を含む食品を、創り出すことだろう。
「ヒトゲノムの全体像が判明すれば、ニーズに合った食料を生み出す方法もわかります」ともカプルニク教授は語る。たとえば親が朝、子どもの弁当を作るときは、子ども1人ひとりに何が一番適しているかがわかる栄養データベースを使うようになる。十分なビタミンの摂取から消化器問題の対応まで、あらゆる要素を考慮して食事を用意するようになるのだ。
「食はより高価になるでしょう」とカプルニク教授。「私たち1人ひとりにカスタマイズされたものになる代わりにね」
「3Dプリンティングが機能性食品を作る」時代
未来のカスタマイズ食品は天然資源から作られるかもしれないが、伝統的な製法の限界を考えると、機能性食品をより手に入れやすくするカギは3Dプリンティングかもしれない。
「食べ物の見た目はまったく変わりませんが、近い将来、1人ひとりの仕様に合わせて食物は『プリント』されるでしょう」とカプルニクは予測する。味も色もカスタマイズされ、材料は医師の処方や個人の食事療法のニーズに合わせて調合されるのだ。
カスタマイズされた3Dプリンティングの食が選択肢に加わるというのはすばらしい考えに聞こえるかもしれないが、これは、世界の人口のごく一握りしか手に入れられない贅沢品となる可能性が高い。
その代わり、第三世界の食料は無味で単調になり、単に生きていくための必需品でしかなくなる。発展途上国はNASAで有名な宇宙飛行士の「パウチ食品」に近い、コンパクトな配給食のようなものに頼ることになるだろう、と専門家は考えている。
栄養強化したエナジー・バー、ビスケット、乾燥スナックなどが、増え続ける人々の空腹を満たす手助けをする。あまり食欲をそそるものではないが、機能性は高い。最大限の栄養を提供し、満腹感を与えてくれるだろう。
カプルニク教授は、先進国も需要を満たすために濃縮食品に頼るようになるかもしれないと予測する。その時代には、3Dプリンターが食のバリエーションと目新しさの需要を満たしてくれるはずだ。さもなければ、昔ながらのエナジー・バーが役立つかもしれない。