AirPods Pro ノイキャン参戦、後発ゆえの勝算

AirPods Pro

10月30日に発売となったアップルの「AirPods Pro」。“耳からうどん”と揶揄された初代AirPodsが2016年に登場以来、斬新なスタイルとiPhoneとの親和性を武器に、またたく間に「ド定番」アイテムとなった。

アップルのカルチャーを作るそのパワー、思い返せば、有線のイヤフォンも各社が「白以外」を製品化する中、白をポイントに訴求し、店頭に白いイヤホンが急に増えたあの頃が懐かしい。

3年目にしてメジャーアップデートされた“短いうどん”こと、AirPods Pro。すでに各所でレビューが始まっているが、今回その最大の注目は「ノイズキャンセリング」だろう。

ノイズキャンセリングについて、少し掘ってみる。


Apple HPより

外部から取り込んだ音の波長に、特定の同じ波を当てて音を打ち消すのがノイズキャンセリングの基本だが、その作業は内蔵されたプロセッサが仕切る。環境音をどう判断するか、具体的に何の音を消す対象と想定しているのか、ある音は消えても、ある音は同じように聞こえる調整といった、とても繊細で各社の技術力が試される頭脳だ。

ノイズキャンセリング自体は、すでに多くのヘッドフォン、一部のイヤフォンに搭載され、御愛用の読者諸兄も多いことだろう。その良し悪しは、上記の通り制御するプロセッサの技術に加え、音を取り込む集音口(マイク)の数と大きさによって決まる。つまり、口径の大きいヘッドフォンと相性が良く、ゆえに製品バリエーションも多くなっている。

イヤフォンでは、小さい筐体に全てを詰め込まねばならず、特にワイヤレスタイプには限界がある。有線のイヤフォンでは処理エンジンのプロセッサ、バッテリーをイヤフォンと別にすることができ、例えばノイズキャンセリング技術で抜きんでた評価を得ているBOSEは、機能の役割を無理に詰めこむことなくノイズキャンセリングに対応する製品もある。

後発&ワイヤレスのAirPods Proに勝ち目はあるか

ムーアの法則も前倒しされる今の時代、ノイズキャンセリング搭載のイヤフォンも劇的進化を遂げてきている。AirPods Proの登場でノイズキャンセリング界は、アップル、ソニー、BOSEの実質3強という様相だ(オーテク、ゼンハイザーファンの方には申し訳ない)。

BOSEの「quiet comfort」シリーズはその実力に定評があり、35年もの研究期間はダテじゃない。同社のプロモーション動画で、街の一般の人たちに視聴してもらい、その静粛性に驚き、表情が一変するシーンを集めたものがあったが、私たちに広く感動を与え、ノイズキャンセリングブームの起点の一社になったことは間違いない。

ソニーはといえば、現会長平井一夫の社長時代から目覚ましい「ソニー復活劇」の中で、立てかけるBRAVIAなど洗練された製品群がいくつも生まれた。当然ノイズキャンセリング搭載のヘッドフォン、イヤフォンもある。そもそも音楽業界からの支持は熱く、かの有名な「MDR-CD900ST」など、名品も多い。品番のアタマに「WF-」と記されるワイヤレスシリーズは特に人気で、最新のWF-1000XM3はその静寂性が話題となり、加えて今回AirPods Proにも搭載されている「外音取り込みモード」もすでに搭載ずみだ。
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文=坂元 耕二

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