優勝したプレーヤーはスタジアムでサポーターの称賛を浴びた。ゲームとリアルが結合する可能性とは。(2019年10月25日発売のForbes JAPAN12月号「スポーツ×ビジネス」特集にて、アワードの全記事を掲載)
eスポーツの選手たちが贈り物を届ける戦士となり、クラブサポーターとして高い“名誉”が与えられる──。日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)とコナミデジタルエンタテインメントの「eJリーグ ウイニングイレブン 2019シーズン」は、KONAMIのモバイルサッカーゲームを使ったeスポーツ大会だ。
JリーグのJ1・J2全40クラブそれぞれにエントリーした選手による対抗戦で、年齢別(U-15・U-18・フル)の3人チームの対戦により優勝を競う。オンラインでの予選大会、クラブ代表選考会を経て、 クラブ別の代表選手を決定。2019年7月に本大会が開かれた。決勝は清水エスパルス対FC東京の対決となり清水エスパルスが優勝した。
といっても大会は単なるeスポーツ大会ではない。豊かなスポーツ文化の振興を目指すJリーグの理念を実現するために、いくつものユニークなルールが盛り込まれている。
まず、優勝賞金500万円をはじめとした総額1500万円の賞金は、成績順位に応じて参加選手ではなくクラブに贈られる。大会開催前には各クラブの賞金の使い道をJリーグ公式サイトで公表した。「選手の育成費用」「eスポーツ関連のイベント開催」等々だ。参加選手たちはこれらも参考にして代表選手としてエントリーして戦う。賞金はないが名誉はある。実際、優勝した清水エスパルスの代表3選手は、Jリーグの公式戦の場でクラブから表彰セレモニーを設けられ、ファン・サポーターから喝采を浴びた。
年代の異なる3つの世代で1チームとして団体戦にしたこと、さらにゲーム専用機ではなくスマートフォンでの戦いにしたのも広い年代層の参加を期待してのものだ。
KONAMIのサッカーゲーム「ウイニングイレブン2019」は、モバイル版が累計2億ダウンロードを超える人気ゲームで、国内では毎日およそ100万人が楽しんでいるという。Jリーグでeスポーツ関連の事業を統括するJリーグマーケティング社長の窪田慎二は、「ゲームはいまや大きなメディアになっています。Jリーグとしてリーチしづらかった10代から20代の人たちと接点をもてるのは、ファン層の拡大のためにも意味のあるイベントだと考えました」と語る。