小橋賢児が「東京2020NIPPONフェスティバル」で実現したいこと

LeaR代表取締役/クリエイティブディレクター 小橋賢児

2017年に東京・お台場で初開催した、日本伝統の花火と最先端テクノロジー・パフォーマンスがシンクロする、未来型花火エンターテインメント「STAR ISLAND」。

現在「STAR ISLAND」の総合プロデューサーを務めるのが、小橋賢児(LeaR代表取締役/クリエイティブディレクター)であり、過去には10万人以上が集まる日本最大級のダンスミュージックイベント「ULTRA JAPAN」を手掛けてきた。

小橋は今、東京パラリンピックの開幕前に行われる東京2020組織委員会主催「東京2020NIPPONフェスティバル」のクリエイティブディレクターでもある。

障がい者やLGBTなどを含む多様な人々が参加する街中でのアート・パフォーマンスを通じて、互いの個性を認め合う「ダイバーシティ&インクルージョン」の実現を目指す。

この連載対談のホスト役である杉山文野もまた、動員数が20万人を超える「LGBTプライドパレード」を運営するNPO法人・東京レインボープライドの共同代表理事。

多様性に富んだ多くの人々を集めるメガイベントのリーダーという共通点を持ち、6月のニューヨーク・プライドパレードにも、ともに赴いた杉山と小橋が、ダイバーシティの追求によって生み出されるパワーについて語りあう。


杉山:いつものように呼ばせてもらっちゃうと……賢児くんは人生そのものが多様ですよね。

裕福ではない幼少期、小学2年で葉書1枚でオーディションに合格、子役としてデビューして若手俳優として爆発的に売れて、20代後半で休業して、世界を回って、一文なしになって身体も壊して、30歳をきっかけにイベントプロデュースを手がけるようになって、大成功して、今年40歳になって……。

小橋:人生に安定した時期がありませんでしたね(笑)。普通に生きていたら見えない世界を見ることができて、感覚や価値観を変えてくれる体験が多かった。そのすべてに意味があって、今、役に立っています。

8歳で芸能界という大人の世界に入りましたが、そこには変な人がいっぱいいたし、中学生で新聞配達をやって、また別の大人の世界も見ました。どうも僕は、全然色の違うグループやコミュニティーにひとりで入っていけるみたいなんです。

つなぎ役というのが自分の役目なのかと思っています。名前も「小橋」で、それこそ小さな架け橋をいろいろやってきました。上と下のジェネレーションとか、デジタルとアナログとか、世界と日本とか。

杉山:そう言われてみると、僕もつなぎ役、架け橋になってきたことも多かったように思います。

実家が歌舞伎町で70年に渡り飲食店を経営してきたので、僕は生まれも育ちも新宿です。小さなころから「いろんな人がいるなぁ」と感じながら育ってきて、トランスジェンダーの僕も、その「いろんな人」のひとりだったんですよね。

大人になった今は、この街の出身者ということと、トランスジェンダー であるという特性を生かして、歌舞伎町を「浄化」しようなんていう“昼の新宿”の人たちと、ホストや二丁目のおねえさんたちのような“夜の新宿”の人たちの間を行ったりきたりすることで、「一緒にやりましょう!」と橋渡しができるようになっている。
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構成=岡田浩之 写真=藤井さおり

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