本当のこと言えてる? 水原希子の「ブレない」発信の強さは、こうして磨かれた

水原希子

水原希子

モデルや女優として国際的に活躍し、530万人ものインスタグラムのフォロワー数をもつ水原希子。SNS上でのある「失敗」を乗り越え、自由に発信を続ける理由とは──。

Forbes JAPANでは、9月25日発売の本誌で、「WHO IS THE TRUE INFLUENCER?」(真のインフルエンサーとは何だ?)と銘打ち、トップインフルエンサー50人を選出。彼ら、彼女らの言葉やアドバイザリーボードたちの論考から、インフルエンサーなる現象を多角的に描く。




日本屈指のフォロワー数のいる渡辺直美に、「真のインフルエンサーは誰か?」と本誌編集部が問うと、こう答えたという。

「とにかくブレない、水原希子ちゃん」──。

日本語、英語、韓国語を操る水原は、国際的にモデルとして活躍するだけでなく、新たな展開も見せている。2017年にラブ&ピースのコンセプトを掲げ、クリエイティブで実験的なプロジェクトを世界に発信するブランド「OK」を始め、昨年からは個人事務所を設立し、自ら経営を行う。

ツイッターでの水原は、歯に衣着せぬ発言が目立つ。「自分は自分。他人は他人。歩み寄る努力をして、それでもわかり合えなかったら、無理にわかり合おうとする必要はないね」と発信したり、モデルのあり方について問いかける投稿をきっかけに、メディアに「#MeToo」運動の象徴として取り上げられたりしたこともあった。

ヘイトスピーチやネット上の中傷への対策や事例についての投稿をリツイートすることもある。その社会的な発信の真意は何だろうか。この疑問から、彼女が抱く意外な問題意識が見えてきた。

「私はそのときに思ったことを書いている だけで、ポリティカルな活動をしたいと思ったことはなく、常に何かを掲げて生きた いわけでもないんです」。一つひとつの発言にポリティカル・コレクトネスを求め、白黒をつけて判断する風潮に疑問をもつ。

「何が正しくて、正しくないか」。この点を突き詰めすぎると、表現することに制限がかけられてしまう。クリエイターやアーティストにとって、表現がすごく難しくなるのではないか、と水原は提起する。

「それに人がどんどん考えなくなっていくと思うんです。嫌だと思うものを見せることで、あらためてダメだと気づいたり、考えさせられたりすることがある。それがアートやエンターテインメントには必要だと思います」


インスタグラム(@i_am_kiko)から。左上:コーチとのコラボレーション。右上:ブルーのヘアに同色のショートドレス姿で撮影。左下:「地球は美しい!」というコメントとともに。右下:現代美術館テート・モダンの展示作品を投稿し、議論を呼んだ。

SNS上にはさまざまな顔の水原がいる。時に、プライベート旅行の様子を投稿し、自然の中でリラックスした素顔を見せる。仕事だけでなく、SNSに日記を記すような感覚で日常をつづる。そこに打算はない。

ある人にとってはハイブランドに身を包むモデルが水原希子であり、またある人にとってはスクリーンで存在感を放つ女優が水原希子。夏フェスで無邪気にはしゃぐ姿こそが水原だという人もいる。水原自身も、決して私だけに向けているものではない」。水原自身も、多種多様な反応を楽しんでいるようだ。

「インスタグラムで『いいね』がつく投稿は、ファンによってそれぞれ違う。それが面白くて。いろんな自分を認められている感じがするんです。個性って変化していくもの。だから、自分のすべてを好きと思ってもらわなくてもいいのかなって思います」

彼女が常に前進しつつも、「ブレない」のにはわけがある。ある出来事が彼女の考えを変えるきっかけになったのだ。

2016年、インスタグラムの投稿に対して、水原が何気なく「いいね」をつけたことが、国内外で波紋を呼んだ。もちろん誰かを傷つける意図はなかった。しかしその影響力は計り知れず、水原は動画で、謝罪を表す声明を投稿するまでの事態となった。波紋は思いがけぬところへと飛び火となって広がったのだ。それは、自身のルーツのことだった。

アメリカ人の父と在日韓国人の母の間に生まれた水原のルーツについて、インタ ーネット上で心ない言葉を浴びせられた。たった一回の「いいね」のクリック。それが自身の生い立ちという「存在」まで批判される。容赦ない言葉。顔が見えない人々からの敵意。「正直、怖い思いもしました。 そして、ただただつらかった」と振り返るが、自分と向き合うことで変化もあった。
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文=徳重辰典 写真=筒井義昭

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