米誌「カレント・ヒストリー」最新号に掲載された記事によると、世界の2大経済国が互いに経済的な依存度を高める中で、中国は自らが米国と同等の力を持つに至ったという「勘違い」をした。それが中国の政府当局者らに、米国と「ウィンウィン」の取引を成立させることは可能であるとの自信を持たせてしまったという。
韓国・延世大学のXiangfeng Yang助教は「The Lose-Lose Trade War(どちらも敗者の貿易戦争)」と題した記事の中で、「中国で一般的な分析において、そうした(誤解されている)両国関係につながっているのは、年間数千億ドルの規模になった双方向の貿易と投資額に示された堅固な経済的結び付きだ」と説明する。
「中国の政府当局者の多くがよく使う例え話では、それは全く異なる文化と政治システムを持つ“口論が絶えない夫婦”のような両国を、離婚不可能な形で結びつけたものだとされている」
だが、こうした考えは大きな間違いだ。一次産品の輸出と技術の輸入に依存しながら成長を続ける新興経済国と、成熟した先進国の「相互依存」関係が同等の力に基づいたものになるまでには、長い時間がかかる。
米中両国の「離婚」は、米国にもいくらかの影響を与えるだろう。だが、現時点で壊滅的な打撃を受けるのは中国だ。それにも関わらず、「相互に依存」しているということが、中国の政府当局者に勘違いをさせた。
「中国は“ウィンウィンの関係”を一方的に打ち切れば、両国経済は互いに破壊的な悪影響を受けると考えた。それが、米政府の対中政策が極端に変化することはないだろうという過信につながったのだ」
こうしたことが貿易戦争を招き、貿易戦争はテクノロジー戦争、通貨戦争にまでエスカレートした。助教は、「中国政府の当局者やアナリストらの多くが貿易戦争に備えていたかどうかはもちろん、実際に起きる可能性について真剣に考えたことがあったのかどうかも疑わしい」と指摘する。
つまり、中国政府が自国に米国と同等の力はないのだと認識しない限り、双方が近いうちにこの問題について合意に達することはないだろう。助教は、すでに米中関係は貿易戦争によって傷ついているとして、次のように述べている。
「両国間の確執は双方に経済的な分断をもたらしただけでなく、相互関係を過去50年間で最低の水準にまで押し下げた」
助教は今後の米中関係についても悲観的だ。たとえ両国が貿易問題について合意に達したとしても、その見方は変わらないという。それは、「どのような合意も、長期にわたって続く経済戦争の一時的な停戦に過ぎない」からだ。