ビジネス

2019.09.13

異端児扱いだった私の「風向きが変わった瞬間」


日本の自動車産業をイノベーターに

2人には、日本の産業界への危機感がある。数十年前に世界のトップを走っていた家電産業や携帯電話産業は没落。いまや日本経済の屋台骨である自動車産業も大きな岐路に立つ。次世代のモビリティ競争では、電気自動車(EV)で中国勢が力を増し、自律運転ではテスラやグーグルなど米国勢がリードしている。

業界のリーダーになるには、リスクを取って最初にイノベーションを起こすしかないが、IoTの時のように「様子見」をしていれば、業界内のイノベーターは決まってしまうだろう。

そんな中で、空飛ぶ車開発は、日本の自動車産業がリードできる分野になると2人は期待している。EVよりも高度な技術が求められるうえ、テック産業にはないハードウェアの高い生産能力を生かすことができる。NFTの強みであるソフトウェアの力とコラボレーションできれば、次代のスタンダードをつくれるかもしれない。

2人は住む場所を変えながら3回とも異業種に飛び込んだ。周囲が「無茶」と思う境界(バウンダリー)をなぜ超えられたのか。

「みんなの目指す方向から外れても、進む勇気が必要です」と真紀は言う。そして、こう付け加えた。「私が何でもできると思えるのは家族がいるからで す」。周りに理解されず、失敗の可能性があっても、そばで支えてくれる家族の存在が安心感になった。

40年近く前、手のひらをずっと見つめ、動けなくなっていた女の子の影はもうない。

表紙の撮影を真紀に打診したとき、驚いたようにつぶやいていた。「私はどこにいても、いつも異端児扱いで、表紙に選ばれるなんて思いませんでした。風向きが変わりましたね」。

特集テーマは「自力で成功した女性」。それを知ると語気を強めてこう言った。「いまの日本の閉塞感を打ち破るのは、女性だと思います。日本で子育てをしている間に、努力家で想像力も感性も豊かな女性たちと会いました。この人たちが活躍できたら、可能性は本当に無限大だと思います」。

今年、8歳になったばかりの娘は「ママ、私は大きくなったら会社を作るんだ」と真紀に宣言した。会社名はNGU、ネバー・ギブ・アップだという。


カプリンスキー真紀◎NFT共同創業者兼CEO。1977年、名古屋市生まれ。英バッキンガム大学卒業後、イスラエルのバル・イラン大学で心理学修士号取得。GE Digitalを経て、2018年から現職。ヘブライ語、英語も堪能。

文=成相通子、瀬戸久美子

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