日本では、経済産業省と国土交通省が18年8月から「空の移動革命に向けた官民協議会」を開催し、eVTOLの実現に向けたロードマップを策定した。次世代の短中距離の交通ソリューションとして期待が集まっている。
仁位はNFT設立の話を聞いて驚いた。「eVTOLは国の規制が絡む業界で、見通しを立てるのが難しい。人の命に関わるのでリスクも高い。2人は自分たちの資金をつぎ込んで、深くコミットしています。よくこの分野を選んだな、と思いますよ」。
eVTOLに取り組む多くの企業は、ヘリポートのような交通のハブをつくり、特定区域間の移動手段としてeVTOLを活用することを想定している。都市部に住む富裕層がメインターゲットだ。しかしNFTは独自の戦略で幅広いマーケットを狙う。
「私がエンジニアに言っているのは、母親が子どもを連れて自宅からドアツードアで目的地に行けるようにする車だ、ということです。子どもを車に乗せるだけでも数分かかりますから、乗り換えせずに走行、飛行もできることが重要です。そして、操縦者なしの完全自律飛行を目指しています」
NFTのロードマップはこうだ。20年にハーフサイズのデモ機を完成させ、飛行実験を実施する。21年ごろをめどに資金調達を行い、フルサイズのデモ機を作成。25年にはさらに資金調達を経てディベロッパーと提携して実用機の製造・販売にこぎ着ける──。
ガイの着想のきっかけは、ベイエリアのひどい交通渋滞だった。3次元空間を活用すれば渋滞は解決できると閃いた。ガイも真紀もスタートアップの創業者として常に忙しい。子どもたちと一緒に、車内や食卓で会社について話すのが貴重な時間だ。
通勤や通学にかける時間を減らせれば、大切な人と過ごす時間を増やすことができるだろう。いつものように5人で話をしながら、「家族の価値を大切にする空飛ぶ車の会社をつくろう」と決めた。
WBOのつてを使って、イスラエルで軍用機や民間航空機の開発に長年携わったエンジニアや、自律飛行やAIの専門家を採用。アメリカの大学で航空宇宙工学を専攻した新卒の菅野晃平も入社し、日米イスラエル混合チームが生まれた。