しかし、男性の乳がんがまれなことから、男性は新たな治療法を模索するための臨床試験から除外されていることが多い。米食品医薬品局(FDA)は先日新たな文書を発表し、この現状を変え臨床試験に男性を含めるよう企業に促している。
FDAの腫瘍学研究拠点(COE)所長のリチャード・パズダー博士は「私たちは今日、乳がんの臨床試験に男性患者を含めるよう促す指針の草稿を発表した」と述べ、「この指針が完成すれば、実世界のデータを使った研究など異なるデータソースを用いたさまざまな試験を設計することで、乳がんを持つ男性への有効性・安全性を強化する追加データを生成できることが産業界に対し明確になる」と語っている。
乳がんを患った女性と同様、男性の乳がん生存率はどれほど早期に腫瘍が診断されたかや、腫瘍が胸から他の部位に転移しているかどうかなど多くの要因によって決まる。しかし、男性を含む試験が不足していることから、承認された治療は女性よりも少なく、限られた数の承認薬にがんが反応しなくなった場合には女性よりも早い段階で策が尽きてしまいかねない。
男性乳がん患者の支援者であるロッド・リッチーは「私はオーストラリアで、知り合いの男性乳がん患者が参加できる乳がん試験を見つけることができなかった、こうした試験の数は、米国でも非常に少なかった」と語る。「私は最近ようやく、タモキシフェンの使用に関するインターネット調査に参加することができた。この調査は米国を拠点とし、全ての国籍と性別の参加者を受け入れていた」(リッチー)
米国がん協会(ACS)によると、タモキシフェンはホルモン受容体(HR)陽性乳がんを持つ女性患者の病状を顕著に改善すると評価されており、90%がホルモン受容体陽性乳がんを持つ男性乳がん患者に特に効果的な場合が多い。タモキシフェンは男性の間でも非常によく調査されているが、ホルモン受容体陰性乳がんの人やタモキシフェンに反応しない人、反応が止まった人の場合は効果が期待できない。ホルモンを対象とした薬の中で、他に男性の間で大規模な調査が行われたものは存在しない。