谷本:その「次のこと」はどうやって決めるんでしょうか。
亀山:ひとつの基準は、自分たちが脅威だと思う業種にあえて投資する。インターネットはビデオレンタル事業から見ると、基本的には敵です。だけど「自分たちを滅ぼす事業」に首を突っ込まなければ、滅びるだけで終わってしまう。
インターネットが流行らなければ、それはそれで構わないし、流行ったとしても参入していれば、会社がつぶれるような最悪の事態は免れます。
一見リスクを取っているように見えますが、どんな未来になっても生き残れるようにという保険です。今、小さなリスクを取らなければ、未来にリスクは大きくなると考えているんです。常に次の可能性に投資していくのが基本的な発想ですね。
トレンドは『Nスペ』『クローズアップ現代』で見つける
谷本:FX事業を始めたときは驚きましたが、今や国内シェアNo.1を誇る事業になっています。当時はFXが流行っており、さまざまな企業が参入しましたが、なぜDMMはシェアNo.1を取れて、他企業はできなかったのだとお考えですか?
亀山:やはり、任せたやつが優秀だったからですね。実はFXを立ち上げたのは、もともとはDVD販売事業の売上を牽引してきた社員なんですよ。全くの畑違いではありますが、彼の経営手腕を買ってFXに異動させました。
商売は基本的に「作って売る」か「仕入れて売る」の2つだけで、そんなにやることは変わらないんですよ。だから金融だろうがDVDだろうが、データ分析やマーケティングはそんなに変わらない。だから、実績がある社員は別の事業でも力を発揮します。
優秀な営業マンは何を売らせても優秀だし、優秀な経理マンはどんな会社を担当させてもしっかりやります。そして優秀な彼らに、流行りの商品を渡すのがトップの仕事だと思っているんです。売りやすいものを渡せば彼らも効率よく稼げる。
じゃあ流行っているものをどうやって見つけるかというと、『NHKスペシャル』とか『クローズアップ現代』とかを観てれば大体のことはわかります。TVやインターネットには流行りの情報が溢れているけれど、それを他人事として見るだけか、すぐにそこに出ている人に連絡を取って行動するかの違いだけです。
おそらくここにいるみなさんの会社にも、優秀な人材はいるはずです。でも、彼らに「売れる商品」を渡していますか? 経営判断として、どの業種や分野に行くのかは大きなポイントです。そうでないと、せっかく現場にいる優秀な人材が生かされません。
谷本:投資判断をする亀山さんご自身、つまり、経営者という人は、どのくらいのリテラシー、勘所があれば良いと思いますか?
亀山:僕ですか? 僕は全然ないですね。プログラムは1行も書けないし、FXもやったことがない。自社のヒットゲーム『艦これ』とかも、30分やってよく分かんないでやめましたからね。とくに40歳を過ぎた頃から、流行りを掴むのは本当に難しくなりました。でも、分からないものに投資できるかは重要です。
テクノロジーの仕組みや、どこが面白いのかさっぱり分からなくても、流行っていることさえわかれば、分かりそうな若いやつらにとりあえずやらせてみる。でも、そうすると大抵は赤字になります。お金が減っていきます。お金が減るのは悲しいです。だからちょっとマシにしようと、嫌でも自分も勉強せざる得なくなるじゃないですか(笑)。