ビジネス

2019.09.09 06:30

成長の秘訣は「やどかり型」 DMM亀山会長が語る経営法


谷本:「儲かる仕組み」は時代によって変わると思います。一方、創業者や社員は、その会社が持っている成功体験や習慣に固執してしまう部分もあるかと思います。どうやって変えていけばいいのでしょうか。

亀山:新しいことをやろうとすると、社内の現勢力からはほぼ反対されます。昔からある会社の中で、新しいことを生み出すのはとても難しい。特に長く勤めている社員の考え方を変えるのが難しい。

例えば、DVDの販売部門に動画配信などITの話をしても、なかなか前に進みません。動画配信をやれば、自分たちの部門の売上が下がる可能性が高い。「エンジニアを雇えば、僕たちの仕事はなくなるんですか?」って話になるでしょ。どうしても後ろ向きになる。

だから、もし社内で新しいことをやるなら、別会社を立てるべきです。会社だけでなく、経営幹部も今いる人たちとは全く別の人を選出すべきです。極端な話、新卒採用した2〜3年目の若手をリーダーに据えて、社長の直轄で動いてもらうくらいがちょうどいいと思います。大きなピラミッドで統治するのじゃなくて、独立権を持った小さなピラミッドをいくつも作るという感じですかね。

子会社に対して資金提供し、親会社は財務や法務の部分だけはチェックを入れます。法律違反してしまうと、グループ全体の問題になりますから。あとは収支を管理できることは大事です。でも、それ以外の権限には全く関与せず、子会社に委ねてしまったほうがいい。

ちなみに、DVDの販売部門の業績は落ちてきますが、新しい事業が成長していれるので、社員の雇用は引き受けようがあります。衰退する事業は既存の社員に任せ、成長事業を展開していくことが、結果的に全体の雇用を守ることにつながるんです。



セミナー後の行動で、未来に差がつく

谷本:亀山さんは、10年後、20年後の未来をどのように考えていますか?

亀山:AIやITのなど新しいテクノロジーがどんどん生まれ、どの業種も待ったなしで変わらざるを得ない状況です。若い世代で支えなければ、国も会社も未来がないというのは間違いないはずです。だから今は積極的に、若者の力を発揮できる教育事業や施設を増やしています。

月並みですけど、そういったところに投資しましょうってだけですかね。国は100歳までの構想組まなきゃいけないから大変だけど、われわれ経営者っていうのは、せいぜい20歳から70歳ぐらいの50年間ぐらい。人生の半分くらい。ある意味おいしい部分をやっているだけなんです。

僕が伝えたいのは、「今日この会が終わった後、みなさんはどうしますか?」 という話です。講演が終わったあとに「今日は面白い話聞けたね。じゃぁ久々の東京を楽しもう」って、銀座のクラブとかに繰り出す人も多いと思うんです。

でも、僕が今話したことなんかは、TVやインターネットにも載っているような内容です。むしろこの後、ここにいる人たち同士が居酒屋で情報交換したり、若者の集まるバーにでも行ってみるほうが、得るものがあると思います。どちらにしても横にお姉ちゃんがいても邪魔なだけです。

東京に羽を伸ばしに来たのか、本当に考えに来たのか。せっかく高い参加費を払って来ているんですから、それだけ価値あるものを持ち帰っていただきたい。先ほど、今回のイベント参加費は30万円と聞きましたが、若者向け勉強会の参加費3000円くらいとは100倍違う。でも、むしろ僕が見てきたスタートアップの若者たちのほうが、真剣に向かい合っていると感じます。
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文=筒井智子 写真=日本経営合理化協会

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