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2019.09.05

ベゾスが「アジェンダを破り捨てた」伝説の会議室|シアトルイノベーションツアー第2回

アマゾン初の本格的な本社ビルとなった「パックメッド」ビルディング。アマゾンロゴが掲げられたかつてのエントランス(1999年のもの)


アジェンダ禁止の会議であったが、デイブ氏によると、オペレーション部門は施策実行部隊という特色から、さすがにアジェンダなしでミーティングを進めることがむずかしく、「PACER」と呼ばれる会議のフレームワークを使っていたという。

そこに、現コンシューマ部門のCEOであるジェフ・ウィルクがヴァイスプレジデントとして参画した際に、アマゾンのオペレーション部門が現在最も大切にしている「Safety」を加えてSPACERにし、それがその後、長きにわたって、オペレーションの会議の基本となった。

私もそんな裏話があることは初めて聴いた。ちなみに「SPACER」は、以下の頭文字を取ったものだ。

S=Safety(安全)
P=Purpose(目的)
A=Agenda(アジェンダ)
C=Code of conduct(行動規範)
E=Evaluate(見積もり)
R=Role(役割)

この後Safetyの後に、”Success Story(サクセス・ストーリー)”が追加され、「SSPACER」になった。私が使っていたのは、この「SSPACER」である。


「パックメッド」ビルディング、エントランスから入ったロビー部分(1999年当時)。

パックメッド時代、べゾスは決してエレベーターを使わなかった。それは、エレベーターを待つ時間の無駄をなくすためと、健康維持のためだったという。ベゾスの居室は現在、「Day1」というビルに移っている。あの高層ビルでエレベーターを使っていないかどうかは定かではないが──。

ほかにもデイブ氏は、ベゾスの哲学が感じられる様々な逸話を披露してくれた。

一例はトイレのドア。そもそもパックメッドのトイレには、両方とも「外開き」のドアが2つあり、出てくる人と入る人がぶつかってしまう「事故」が頻発していたという。それをベゾスは「一方通行にして!」と指示したというのだ。こうした単純化も、複雑なことをとにかく嫌う彼の哲学を表したものかもしれない。今入っている政府関係者の人はその恩恵を十分に享受しているようだ。

ベゾスは「ツイスター」ゲームがお気に入り

そのほかにも、ベゾスの部屋の入口には「Twister(ツイスター)」という、手と足でマークを押さえていくゲームがあって、議論が煮詰まるとよくこれをやって気分転換してたなど、デイブ氏は懐かしそうにかつてのエピソードを披露してくれた。ベゾスはこのツイスターが相当得意らしい。


ツイスターゲーム。ルーレットのような指示板(スピナー)に示された通り、手や足を4色の丸印の上に置いて行き、倒れない人が勝ち。
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構成=石井節子

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