「官民連携」がうまくいかない理由と打開のための3つのヒント

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課題2. 事業化への道筋がつけにくい

2000年代のCSR(企業の社会的責任)の台頭を受け、企業の中でも専門部署ができ、企業としても地域貢献や社会貢献に関わりやすくなってきたが、その中でまちづくりへ参加する企業から良く聞くのが「なかなか事業化への道筋がつけられないし、社内からの理解が得られない」という言葉だ。

本来であれば、地域とつながり、関係性を育む中で、地域の課題を解決する事業創造のヒントもあるかもしれないが、CSRはあくまでもCSR。本業である収益事業に影響がない範囲で実施する傾向が多いように見える。

また、まちづくり活動の中で「お金」が必要な場合、往々にして上記のようなCSRに熱心な企業に出資を期待されるが、企業も企業とて、リターンの見込みがたたない企画に対して簡単に予算はつけにくい。

そのため、多くの企業は「まちづくり=儲からない」という前提で参画しているので、いざ「こんなことをやってみたい」と思っても、事業化を検討していく段階で社内から十分な理解が得られず、上司から「本業に集中しろ」と門前払いされることも多いという。



このように「お金がないとできない」は思考停止のよくあるパターンだ。本来であれば、「この取り組みを事業化するにはどうすれば良いだろうか」という議論がされても良いが、そこまで踏み込んだ話しになるケースは少ないと言えよう。

結果、やる気がある人ほど、会社に黙って勤務時間終了後にボランティアとして関わることになり、ますます本業と地域活動との間に大きな溝が生まれてくる。

課題3. そもそも負担を増やしたくない

冒頭に書いたように、「官民連携」「市民協働」の基本的な考え方は、支出の面でも人的リソースの面でも、行政の負担を減らしていくことにある。行政側はよく「民間や市民で自走するモデルを作りたい」と言うが、民間や市民側にしてみると、急に言われても行政都合で「押し付けられている」と感じてしまう側面もある。

民間側にしてみても、このような地域課題解決のための事業創造に慣れていない場合が多く、結果的に行政側に予算付をお願いする提案を行ってしまうケースをよく見るが、これでは元も子もない。仮にその事業の筋が良かったとしても、行政は企業のような柔軟な対応が難しく、予算策定までに1年以上を要し、仮に予算が通ったとしても、公正公平さを保つために競争入札の実施を余儀なくされる。

市民側も、これまでは行政からの補助金や助成金によって運営が成立していたような活動をさらに強化していくとなると、ますます負担が増えることが想定される。昨今ではクラウドファンディグのような資金集めも注目されているが、なかなかそこまで手が回らないのが現状だろう。

「渋谷をつなげる30人」の場合

このような課題を「渋谷をつなげる30人」の現場ではどのように乗り越え、前向きで創造的なプロジェクトを生み出そうと挑戦しているのか。前述の1〜3に呼応する形でまとめていきたい。
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文=加生健太郎

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