不必要に長い労働時間
だが、少なくとも英国では多くの人が非常に長時間働いている。長時間労働は効率性向上に直接結びつかないにもかかわらず、欧州連合(EU)統計局(ユーロスタット)のデータによると英国の労働者は欧州の中でも週の勤務時間が長い部類に入っている。こうしたデータを踏まえ、一部の研究者は少なくとも生産性の視点から最適な勤務時間を提案している。
長時間労働はこれまで、心臓病リスクやストレス、不安の増加など、さまざまな健康問題と明確に結び付けられてきた。自分がどれほど状況をコントロールできるかが、長時間労働の健康や幸福さへの影響を決める重要要素だということを示す証拠もあるが、一方で私たちの現在の仕事量が果たして適切なのかというもっともな疑問が投げかけられているようだ。
経済学者ジョン・メイナード・ケインズが語った有名な言葉に、人は将来多くの余暇の時間を楽しむようになり、仕事は必要性というより選択の問題になる、というものがある。今回の調査を行った研究チームもまた、勤務時間の削減を積極的に支持し、次のように述べている。
「今後数十年で、現在人間が行なっている有休の仕事の多くは人工知能(AI)やビッグデータ、ロボットに取って代わられるだろう。フルタイムで働きたい人全員のための十分な仕事がない場合、現在の基準を再考しなければならない。その一環として勤務時間を再配分し、たとえ各人が1週間に働く時間が短くなったとしても、仕事から得られる心の健康効果を全員が享受できるようにすべきだ」
週の労働時間の削減
それでは、毎週の勤務時間が非常に短くなったとしたら社会はどう機能するのだろう? 研究チームは、ものごとをうまく進めるアイデアとして、週休5日制や、年次休暇の大幅な増加、さらには1カ月の労働に対し2カ月の休暇を取ることも提案している。
また当然のことながら、研究チームは勤務時間の大幅削減によるメリットとして、ワークライフバランスへの大きな影響や、生産性向上、職場への通勤による環境への影響削減を指摘している。