もう一つ、以前紹介した越境リーダーシップのプロジェクトでは、既存の枠組みや組織を越えて、個人の想いを起点に価値を共創できる人たちをコミュニティ化。それぞれのプロジェクトだけでなく、悩みなどを共有することで、前に進んでいく力に変えています。
このプロジェクトでは、「情熱の企画書」と呼ばれる、単に組織にとっての価値だけでなく、事業構想と推進者の思い入れのバランスが取れた企画書を作成。さらに、撤退条件の作り方、立ち上げメンバーの選定方法、事業が思うようにいかないときの代替案など、実務をしていく上での具体的なアドバイスを、メンバー同士でアドバイスしあっています。
この2つの例からは、「場」や「コミュニティ」があるだけでなく、そこに集う人々が、共通のミッションや悩みを持ち、解決の糸口を探りながら目的に向かっていくという環境に、相乗効果があると考えられます。仲間の姿が刺激となり、自分の気持ちに火がつくだけでなく、それをやり遂げるためのテクニックにアクセスできるため、事業として実現できる確率が高くなるのでしょう。
お見合いおじさん・おばさんの存在も不可欠?
また、成功しているコミュニティやプロジェクトを見ていて思うのは、困っているときに手助けしてくれる「お見合いおじさん・おばさん」的な人がいると、イノベーションは加速するということです。
Inspired.Labは、三菱地所やSAPという数多くのクライアントを抱える企業が運営しており、入居者からのリクエストに応じて、その広いネットワークを活かし他企業につなぐ役割も持っています。越境リーダーシッププロジェクトでは、「こんな人がいるから紹介するよ」と個人ベースでの橋渡しが頻繁に行われています。
こうしたお見合いおじさん・おばさんは、単に条件だけを見るのではなく、それぞれのニーズを理解した上で、ケミストリーまで考えて出会いをセットするのが特徴です。「誰かと誰かをつなぐことで事業が立ち上がる」ことを意識して、補完しあえるパートナーを見つけ出してくれるからこそ、創造的な事業が実現化するところまでいくのです。
私自身も悩んでいるときに、「この人に会うといい」と前職の先輩がお膳立てしてくれたり、越境リーダーシッププロジェクトの仲間に相談したら、「その件なら、この人が詳しい」と紹介してくれて、そこから一気に事業化にこぎつけるなどの経験をしています。
コワーキングスペースのような「場」にいると、とくに自分から言わなくても「困っているみたいだな」と思ったお節介な人が世話を焼いてくれるケースもあります。もちろん、声をあげてヘルプを求めることも大事ですが、自分で何に困っているかわからないほど迷走しているときに、ちょっとした雑談からその悩みに気づき、助け舟を出してくれる存在は貴重です。
同じ方向を向ける同志、似たような悩みを持つ仲間、前のめりにお節介してくれるキーマン。環境を変えることによるより良い効果を求める場合は、これらの要素を意識してみると良さそうです。
連載:「グローバル思考」の伸ばし方
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