ビジネス

2019.08.28 17:00

なぜ社会起業家はメディアにたくさん取り上げられて、苦しむのか


セッションの終盤、参加者からこんな質問が飛んだ。

「投資家や企業などから資金調達をする際、社会性と事業性を何対何の割合でアピールしますか?」

荻原は、「その割合よりも大切なことがあります。それは、起業家のキャラクター・考えとその事業が一致しているかどうかです。実はこれがすごく大事でその迫力に勝るものはありません」と答えた。

「社会をよくしたい。課題を解決したい」という志を持ったインパクト・アントレプレナーだからこそ、アイデアや資金・経営の才能ではなく、人としての魅力と想いが事業を育て、社会そのものを変えていくのだろう。

「自分が知らない自分を見つける」ワークショップ



トークセッションに続き、第2部は街づくりにつながる事業企画などを行うUDS協力のもと、レゴブロックを使い、個人の感性を大切にしたワークショップ(LEGO®︎ SERIOUS PLAY®︎)を行った。

ここでは、世界で広く知られるレゴを用いて「10年後、あなたはどういう社会にしたいか。そこに自分はどう携わりたいか」をわずか7分で表現してもらい、5人ほどのチームの中で「なぜそのこの色・ブロックをこのように組み合わせたか」について指を差しながら1分半でプレゼンするという。

狙いについてUDSの三上浩紀は、「自分が知らない自分を見つけること」と語る。一見、遊びのようにも思えるが、自由な発想を生み出し共有するこのメソッドは、なんとNASAから活気と客を呼び戻したいと切望する商店街までファンは多い。

スタートの合図と共に、参加者は一心不乱に手を動かし続け、作品を形にしていく。



出来上がった10年後の社会をテーマにした作品は、「乗り越えるべき数々の壁」や「人と動物が仲良く遊ぶ究極の多様性社会」「トロフィーや宝箱から背を向ける人々」など十人十色であり、誰もがキラキラした目で童心に返っているようであった。

トークセッションに続いて参加した荻原、流郷を含め、最も参加者の注目を集めたのは、「あえて組み立てずにバラバラのまま集めたブロック群」という異能な作品。しかも全てが裏返しになっている。

「はめる、よりも寄りそう、並べる方が価値観の多様化した社会にはフィットするのではないかと思いまして。それに今が正しい、表だと思っているものが実は裏なのかもしれません」という作成者の言葉に息をのんだ参加者も多い。

「10年後」と言葉にするのは簡単だが、おそらく世界は今とは比べようもないくらい様変わりしたものになっているはずだ。

そんな社会の中でも「もっとみんなが笑顔になって欲しい」という強い想いを胸に抱いて活動し続ける起業家と、それを応援する人々がいれば、きっと一歩ずつでも前に進んでいける。今日のイベントは、そう自分に思わせた。

文=松浦朋希 写真=裵麗善(ぺ・リョソン)

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