テクノロジー

2019.08.09 06:30

巨額赤字のグーグル系AI企業DeepMind、年間「600億円」を燃焼中

ディープマインド創業者のデミス・ハサビス(Debby Wong / shutterstock.com)

ディープマインド創業者のデミス・ハサビス(Debby Wong / shutterstock.com)

2014年にグーグルが買収した英国の人工知能(AI)開発企業が、「ディープマインド(DeepMind)」だ。グーグルは買収にあたり、6億ドル(約674億円)を投じたとされるが、ディープマインドは赤字を生み出し続けている。

英国の企業データベースCompanies Houseの開示資料で、ディープマインドの2018年の損失額が5億7000万ドル(約605億円)まで拡大したことが明らかになった。同社は2017年に3億6800万ドルの損失を計上していた。

ディープマインド創業者のデミス・ハサビスは、幼少期からチェスの神童と呼ばれた人物で、2005年にケンブリッジ大学の博士課程へ進み、脳神経科学の研究をスタートした。その後、2011年にディープマインドを設立した。

同社は給与の高い研究員やデータサイエンティストを数百名規模で採用しつつも、赤字幅を拡大させている。ディープマインドの現在の親会社のアルファベットは、アマゾンやアップル、フェイスブックとAI人材の獲得バトルを繰り広げている。

2018年にディープマインドは4億8300万ドルを投じ、約700人を採用した。2017年には2億4300万ドルを支払っていた。さらに同社は1700万ドルを、学術分野の寄付やスポンサーシップに支払っていた。

ディープマインドは2020年に英国内で独自のオフィスを構える計画で、昨年は建設コストとして1200万ドル、オフィスの家具費用として120万ドルを支出した。

一方で2018年の売上は約1億ポンド(約130億円)だった。ディープマインドはグーグルにソフトウェアを納入し、グーグルはこのソフトでデータセンターの電力消費を抑え、アンドロイド端末の省電力化を行っている。

ディープマインドの広報担当はフォーブス宛の声明で、同社がロングタームの視野からAI研究を進めていると述べた。

「ディープマインドはグーグルに匹敵するスケールで、専門的知見をリアルな世界に導入しようとしており、昨年は売上を倍増させた。今後も基礎研究分野への投資を続け、世界トップレベルの専門家の力を結集し、ブレークスルーを起こしていきたい」

一方でフェイスブックの主任AI研究員のYann LeCunは、昨年のインタビューで「ディープマインドは投資に見合う価値をグーグルに与えていない」と指摘した。「ディープマインドの研究領域はグーグルの事業とはかけ離れている」と彼は述べた。

「私自身はディープマインドCEOのデミスのような立場になりたくはない」とLeCunは続けた。

編集=上田裕資

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