AIは企業の大量絶滅を引き起こすのか?

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1973年、ダニエル・ベルは先駆的な著書『脱工業社会の到来』で、テクノロジーの急速な進歩に促され、激しい変化を遂げる社会について描写した。モノよりもサービスの方がより重要になり、「知識階級」が出現し、性別による役割分担は進化する。ベルはこう記している。

「脱工業社会という概念は主として、経済が変容させられ職業システムが作り直されるような社会構造の変化、そして理論と経験主義、特に科学とテクノロジーの新たな関係性を扱うものだ」

同著を呼んだ多くの人々の中に、若き日のトム・シーベルもおり、もちろん同著から大きな影響を受けた。シーベルはイリノイ大学大学院の工学研究科へと進み、コンピューター科学の学位を取得。1980年代にオラクルへ入社し、リレーショナルデータベースの広範な応用に大きく貢献した。93年に起業したシーベル・システムズではインターネット普及の波に乗り、その後は企業向け人工知能(AI)ソフトウェア大手C3.aiを立ち上げた。

シーベルは間違いなく、テクノロジーの歴史に関する優れた知見を持っている(彼のキャリア中、ITビジネスの規模は500億ドルから4兆ドルにまで成長した)。だが彼には同時に、主要なトレンドやチャンスを先読みする超人的な能力もある。彼は、このために必要なのは「社会予測」だと述べている。

では、シーベルは次にどんな行動に出るのだろう? 彼は最近、著書『Digital Transformation: Survive and Thrive in an Era of Mass Extinction(デジタル変革 大量絶滅の時代での生き残りと繁栄)』を出版した。

彼は同著で、テクノロジーが転換期に差し掛かっていると主張している。パソコンとインターネットの時代は手続きや作業の合理化で特徴づけられた一方で、新たな時代はこれとは大きく異なり、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、AI、IoT(モノのインターネット)という4つのメガトレンドの収束を特徴とする。これらは全て、システムやプラットフォームをよりスマートなものへと発展させている。

シーベルは、既に実現されていることのさまざまな例を挙げている。例えば以下だ。

・ロイヤル・ダッチ・シェル

石油大手の同社は、世界中にある50万個のバルブを分析するAIアプリを開発し、予知保全に役立てている。

・キャタピラー

同社の顧客はiPhoneを使ってトラクターの状態を簡単にチェックできる。同社はまた、製品を監視し不具合を予測するために遠隔測定を利用している。

・3M

同社は請求書に関するクレームの予測にAIを利用している。

これらの取り組みはいずれも大きな効果を生んでおり、数億ドルのコスト削減につながった。もちろんコスト以外にも、カスタマーサービス、安全対策、環境保全の改善によるプラスの効果がある。
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編集=遠藤宗生

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