豊原功補・小泉今日子が語った役者のキャリア論──「無言の圧力を感じなくていい」

小泉今日子らと映像制作会社を立ち上げた豊原功補

10代の頃から俳優、女優としてのキャリアをスタートさせた豊原功補と小泉今日子。名監督、名プロデューサーの指導を受けながら、さまざまな経験を積んでいった2人はいま、映像制作プロダクションを立ち上げ、映画『ソワレ』をプロデュースしている。

また、映画の制作にあたり、制作費とP&A費(プリント&広告費)を集めるため、クラウドファンディングサービス「Makuake(マクアケ)」を活用してサポーターを募っている。

豊原と小泉が実現したいこと──それは独自性があり、自由度の高い色とりどりの映画をつくることだけに止まらない。若手の俳優、女優が「夢を見られる場所を作ること」が目的だという。

「演技の深さ、感情表現の豊かさにおいて、日本は力を発揮できずにいる」と語る豊原。一方の小泉は「失われつつある精神を取り戻したい。上の世代からのバトンをつなぎ、下の世代に渡せるのが私たちの世代だと思う」と語る。その言葉の真意とは? 

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いまの俳優、女優は“夢を持てる仕事”になっていない

──ずっと“演じる側”でキャリアを積まれてきた中で、制作者のキャリアを歩むというのは非常に面白いと思いました。

豊原:“演じる側”にいると、さまざまな役を通じて演技の表現力の幅、深さをもっと身につけていきたいと思うんです。とはいえ今の時代、誰が旗を振ってどこに進もうとしているのか曖昧で分かりづらいような現場に出て行っても、なんとなく先が見えていると言いますか……。ところが、しっかりとビジョンや志を感じる人の作る現場は反対に”大変だよ”という声が聞こえてくるから不思議なものです。

正直、いまの映画業界に夢を持てる仕事が多いか少ないかと言えば、あまり多くありません。実際、そういう風に感じている俳優たちも少なからずいると思います。

そういう人たちが「面白い」と思える場所は何だろうか。それをもう一度考えたいなと思っています。諸外国の俳優がすべて良いわけではないですが、演技の深さ、感情表現の豊かさにおいては、ここのところ日本は置いていかれてるというよりも、力を発揮できずにいるような気がしてならない。

いま、俳優がSNSを通じて政治的発言をすると批判されたり、炎上したりする。何かぼやっと見えない圧力と言いますか、見えない中での自分の勝手な思い。また「こうじゃなきゃいけないのかな」「この人はこういうことを望んでいるのかな」というのを勝手に推し量って、小さな世界で閉じこもってしまっている。
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文=新國翔大、写真=小田駿一

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