ビジネス

2019.08.01 10:00

稀代の経営者たちに見る「Think Big」の力

Forbes JAPANは2019年8月号で創刊から丸5年を迎えた。それを機に、本誌に登場した人を中心に「世に何を問うてきたか」をジャンル別に振り返ってみた。誌面にはこれまで多くの挑戦者が登場してきたが、時々ふと思い出す顔がある。その人たちには、共通点があるように思える。

まず、創刊2号の発売直後の出来事を紹介したい。「すごい会社があるので、一緒に茅ヶ崎に行きませんか」と、私に連絡をしてきたのは、その号の表紙を飾ったアストロスケールの岡田光信だった。

当時、彼はスペースデブリ(宇宙ゴミ)の除去を目的とした人類初の企業を設立して一年足らずで、国内では無名である。まだ実績のない会社の経営者を表紙に起用するのはかなりの冒険だったが、地球規模の深刻な課題を設定し、それを解こうとする姿が面白くないわけがなく、いち早く取り上げたかった。

その岡田に誘われて、茅ヶ崎の郊外にある工業団地に出向いた。教えられた住所にたどりつくと、小さな町工場の門には「由紀精密」という看板があった。父親の後を継いだ大坪正人は、従来型の切削加工をする町工場から、研究開発、企画、設計、デザインまでを行い、航空宇宙分野と医療機器分野に進出する頭脳集団に変貌させていた。大坪と話していると、こんな一言が耳に残った。

「会社の規模だけを見れば中小企業です。でも、規模が小さいから、夢も小さいというわけではないじゃないですか。規模と描ける夢の大きさは、比例するわけではないんです」。つまり、規模だけで会社の価値を規定されることへの疑問である。

その後、由紀精密はフランスに子会社を設立したり、国内の高い専門分野をもった中小企業13社と「町工場集団」となる由紀ホールディングスを設立したりと、製造業をさらなる高みに上げるインパクトを与え続けた。

「中小企業に変わる呼び方を」という彼の話が頭から離れず、そこで立ち上げたのが「スモール・ジャイアンツ」プロジェクトである。第1回の大賞受賞者がミツフジの三寺歩だ。最近、三寺と話す機会があり、ミツフジのその後の進化について話していると、岡田や大坪と似た話になった。リーダーの「Think Big」について、だ。
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文=藤吉雅春

この記事は 「Forbes JAPAN 社会課題に挑む50の「切り札」」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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