「なぜ招待されたのかと不思議がられました」と、ミツフジ社長の三寺歩は笑う。実はIBMが世界中を探してグローバルパートナーの契約に至ったのがミツフジである。
ミツフジは、もとは西陣織の帯の工場だった。斜陽産業であり、同社は廃業寸前に陥っていたが、父親から継いだ三寺がウェアラブルIoT「hamon」によって世界から注目される企業に生まれ変わった。心拍などの生体データを正確に取得し、クラウドへの送信と分析を行って労働中の身体変化を察知する。
この一気通貫した仕組みが武器となり、世界唯一の会社となった。IBMに限らず、今、世界中から「未来をともに切り開きたい」というラブコールをミツフジは受けている。
未来を読むモノサシは企業規模ではなく、価値だ
ミツフジの三寺歩が表紙を飾ったForbes JAPAN 2018年4月号は、初の試みとなった「スモール・ジャイアンツ」特集だ。アワード形式による大賞や部門賞を表彰するこの取り組みを始めた理由は、「歯がゆさ」からと言ってもいい。
全国を取材で歩いていると、世界に貢献している小さな企業や経営者に出会うことがある。あるいは時代を先取りするようなビジネスモデル、技術、地域の中核企業としての貢献など、誰かに教えたくなる企業だ。
ところが、そうした会社は「無名」「中小企業」という理由で、メディアで紹介されないうえ、人手不足に直面している現状がある。
一方で、大学生の就職希望企業ランキングを見ると、今後成長するかどうかわからない会社でも、有名で、規模が大きいという過去の業績で人気が集まる。
だったら、モノサシを変えられないだろうか? 規模は「スモール」でも、創出する価値や影響力は「ジャイアンツ」。未来を切り開く「可能性」を見るモノサシだ。こうして全国で中小企業支援を行う組織12組の協力を得て、スモール・ジャイアンツは始まった。
まさに時代の要請と思うことが度々あった。従来の下請け型が成り立たなくなって久しく、問われているのは経営力だ。自治体、顧客、取引先と協業したり、顧客の中に入っていくことで顧客のニーズを先取りし、コア技術をカスタマイズしたり。結果的に価値を共有化し、企業がファンをつくりやすい土壌ができている。
スモール・ジャイアンツ第2回大会は読者で会場が満席となり、第3回(2019年)は8月から初の地方大会を始める。企業と消費者が同じ方向を見て、未来を手探りする。小さくても独自の武器で影響力をもつことができる。そんな時代が到来したと感じずにはいられないのだ。