そのグッチが始めた、1つのプロジェクトがある。グッチの「ブランドの世界観や価値観と通じ合う場所」を世界中から選び、「グッチ プレイス」と名付けるものだ。現在までに13カ所が選ばれているが、このコンセプトに、「グッチの世界観、ひいてはクリエイティブ・ディレクター、アレッサンドロ・ミケーレの美意識とリンクするスポット」として、日本から初めて選ばれた場所がある。
それは、中目黒にある小さな店、中目黒にある小さな店、「waltz」。アマゾンに15年勤め、名うての事業部長として鳴らした角田太郎氏が立ち上げた、おそらくは世界唯一の「カセットテープ専門店」。アマゾンに15年勤め、名うての事業部長として鳴らした角田太郎氏が立ち上げた、おそらくは世界唯一の「カセットテープ専門店」だ。
waltzには世界中から人が訪れる。そのひとりがグッチの現クリエイティブ・ディレクターのアレッサンドロ・ミケーレ氏だった。
「日本に変なお店があるぞってことで彼がウチに買い物に来て、その縁で選ばれたみたいなんですよ」とオーナーの角田氏は話す。
アマゾン以前には「WAVE」にも勤務していた角田氏手製の「キャプション」つき新作コーナー。売れるとすぐに補充し、キャプションも替えられる、まさに「呼吸している」スペースだ。
waltzとグッチの限定コラボ商品。「waltz」のスペシャルパッチが施されている。写真=帆足宗洋
グッチのHPには、「レトロなマルチメディアと出会える隠れ家」として「waltz」のプロフィールを展開するページがあり、以下のように紹介されている。
「グッチとwaltzはともに、「過ぎ去った時代への愛と、歴史やヴィンテージアイテムへの情熱を、自らのクリエイティビティのインスピレーション源としています。ノスタルジックさとイノベイティブな感性が共存する中目黒にあるwaltzは、グレン・ルッチフォードが東京で撮影した2016年秋冬広告ビジュアルを彷彿とさせます」
そのグレン・ルッチフォード撮影の広告ビジュアルでは、「混沌とした光と音の渦」「伝統とモダン、そして静けさとカオスが入り混じる」(同じくHPから引用)東京のネオン街などで、モデルたちが思い思いにグッチを身にまとう。「waltz」の、その端然とした無機質な佇まいと扱うメディアの「レトロ」さとのギャップや、沈黙しているようで、実はソフトウェア(商品)が時事刻々と入れ替わる二極性との共通点は、確かにありそうだ。
waltzとグッチの限定コラボ商品。写真=帆足宗洋