ビジネス

2019.07.02

エンタメで世界を獲りに行きたいアカツキが、いま「インド投資」に夢中な理由

AET Fund インド責任者の河村悠生


英語でない言語を使ったバーナキュラーコンテンツの出現

こうした変化に伴って出てきたのが、冒頭で紹介したバーナキュラーコンテンツだ。

多民族国家であるインドでは、英語を日常的に使う人は約10%程度の1億2千万人ほどしかおらず、ヒンディー語やタミル語など22種類以上もあると言われる英語でない言語を話す人の方が圧倒的に多い。

これまでは、スマホを所有しインターネットを日常的に使う層と英語を理解できる層は高所得者でほぼ一致していた。ところが、急速なスマホの普及によって、英語を使わない人たちがスマホユーザーになったことで、その多言語を用いたバーナキュラーコンテンツが増えることとなったのだ。



「インド発のアプリやモバイルサービスにおいては、英語以外のコンテンツがほぼないのが現状。ユーザーに不便が生じているため、ヒンディー語など多言語展開のニーズが高まっています。それに伴って、日本でいう『スマートニュース』や『グノシー』のようなニュースサービスのローカル版など、地域の情報をその地域の言語で発信していくサービスが増えてきています」。

特に盛り上がっているのが教育分野だ。「スタディサプリ」のように学習支援のためのサービスを多言語で提供する「教育×IT」、いわゆるエドテック分野に人気が集まっている。

インドでは、教育の地域差は大きな社会問題だ。都市部と地方の村、都市部の中でも富裕層が住む地域とそうでない地域では、教師の質にも格差があり、塾や予備校に通いやすい富裕層の子どもしか、大学入試にチャレンジしにくい現実がある。

「スマホさえあれば、これまで教育を十分に受けられなかった低所得層の家庭でも、英語ではなく地域の母語を使ったアプリで勉強できるようになる。貧しい農村地域出身でも、モバイルでアプリを使って勉強すれば、高所得の仕事につけるかもしれない。教育に対して熱を入れている家庭も多いので、これからますます盛り上がっていくでしょう」。

爆発的なモバイルエンタメ消費がこれから始まる「新しい場所」インド。今後、中国発の「TikTok」のようなインドローカル発のエンタメコンテンツが数多く生まれ、インド発の新たなトレンドが世界を席巻することは間違いないだろう。

文=松崎美和子 写真=大本賢児

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