Living With Flowers Every Day

先日伊豆大島に行って、数年前から取引をしているクチナシの生産者さんを訪ねました。

ハウスに入った途端に広がる、クチナシの香りを嗅いだときの幸せ感。なんとも言えない気分になります。僕ら花屋はこれを毎年嗅いでいますが、きっとクチナシの香りを知らない人もいれば、数年嗅いでいない人もいるのかなと思います。

クチナシは一輪数百円で買えるような花。この数百円の花がどれだけの幸福感、季節感、リラックスをもたらしてくれるかを考えると、花が遠い生活は気の毒だなとさえ感じます。



昔々、何もなかったような時代は、身の回りで咲いているきれいな花を見ては、「誰かにあげたいな」とか「この香りを誰かに届けたい」というピュアでナチュラルな気持ちで花を贈っていたのではないかな、と思います。

それが今では、物が溢れ、逆に自然の方が遠い存在ですが、忙しい人々にこそ、「“何か”のときに花を」ではなくて、「“普段から”身近に花を」飾って欲しいなと思います。誕生日とか結婚記念日とか母の日だけではなくて、花屋の前を通ったときに、「ちょっと奥さんに持って帰るか」とか「会社のスタッフにプレゼントしようかな」とか。花はそれぐらい気軽に飾る、存在すべきものではないかなというのが僕の考えです。

そういった意味で、このコラムでは、「Living With Flowers Special Day」ではなくて「Living With Flowers Every Day」をテーマに、花にまつわることを書いていこうと思います。

予期せぬタイミングで贈るのがいい

ここで、花贈りのコツをひとつ。僕は花屋なのでよく花をプレゼントするのですが、予期せぬタイミングで贈る方が感動してもらえるということを、僕は身を持って体験してきました。

「今日は誕生日だからお花もらえるかな」とか「結婚記念日だからお花くるかな」という日ももちろんいいのですが、なんにもないときに「ちょっといい香りの花を見つけたから持ってきた」とか「そこらへんで摘んで帰った」でも構いません。

例えば、3月3日の桃の節句に、桃の入った小さなブーケを周りの女性にプレゼントするなんていうのはすごく喜ばれると思います。ミモザデーと言われる国際女性デー(3月8日)にはミモザ、フランスの「すずらんの日」の5月1日にはすずらんなど、イベントに合わせるのも素敵です。

食事をごちそうするのもよいですが、もしかしたら1週間もたてば覚えていないかもしれません。食事の帰りに一輪でも花をプレゼントすれば、その予期せぬ感動は、1年どころか2年でも3年でも、記憶に残るのではないかと思います。

僕は家に花を飾るとき、よく“一輪”を飾ります。たくさんの花も豪華でよいのですが、いろんな花をミックスさせると、どの花がどういう香りなのか、どんな葉がついているのか、どういう変化をおこしているのか、どんなふうに花開くのかがなかなか見えてきません。


バラの花が開く様子。同じバラでも、形も咲き方も様々。

花は、しっかり見るなら一輪がいい。「花」や「茎」や「葉っぱ」に一週間ほど向き合うと、その花のものすごい変化に面白みを感じるはずです。だから贈るときも、一輪でも十分なのです。

文=井上英明

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