最低賃金の引き上げから教育・医療の無償化まで、ギリシャは試すことができる社会主義的な政策のほぼ全てを試してきた。そして、その結果を見てきた。大量の倒産、失業率の急上昇、政府債務の急増、長期に及ぶ不景気だ。
米国人は社会主義に対して、愛憎相半ばする感情を持っている。20世紀前半の米国では、世界の大半の国と同様、社会主義的な政策は高い支持を得ていた。だが、1950~60年代にかけて、そうした政策はひどく嫌われるようになった。冷戦時代には、社会主義のメリットを率直に語れば、それだけでトラブルに巻き込まれる可能性があった。
最近では再び、状況に変化が見られる。調査会社ギャラップが先ごろ発表した調査結果によれば、米国人の40%以上が、社会主義を良いものだと考えているという。こうした人たちは、社会主義的な政策は特定のグループに根強く残る貧困、教育費の高騰、不十分な医療保険など、米国が抱える慢性的な問題に解決策をもたらしてくれるとみている。
「夢」の問題点
問題は、これらの米国人が「社会主義」とは何か、それが長期的には経済にどのような影響を与えるかについて、明確に理解しているようには見えないということだ。
彼らは経済成長を犠牲にしながら一定数の社会主義的な政策の導入を試み、それらに成功したノルウェーやデンマーク、カナダの例をよく見てみる必要がある。そして、さまざまな社会主義的政策を試してきたギリシャの例についても同様だ。
ギリシャ人は過去40年ほどの間に、その大半が社会主義に心を奪われた。だからこそ彼らは、ほぼあらゆる形の社会主義的な政策を試みた。最低賃金の引き上げが広まったことは、業績に基づかない賃金にもつながった。
働く権利よりもストライキする権利を守る規則、企業が破産を申請した場合でも従業員を解雇しにくくするような規則も定められた。経済の大部分が「社会化」された結果、企業の所有者や経営者は政治家や官僚に変わっていった。
そして、公立の教育機関は入学試験に合格した全ての学生に対し、所得に関する基準を満たせば授業料だけでなく、書籍、食事、住居など全てにかかる費用を負担するようになった。その結果、職業として延々と「学生」を続ける人たちも現れた。