6月19日、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ(ITV)のパートナーである河野純一郎が移籍し、独立系ベンチャーキャピタルのANRIにジェネラルパートナーとして参画することが発表された。
「“VC業界では、独立して一人前”という風潮がある」と河野自らが語る通り、トップキャピタリストが次のキャリアとして“独立”ではなく、“移籍”を選ぶ例というのはそう多くない。なぜ独立ではなくANRIへの移籍の道を選んだのか。その理由、そしてANRIの新ファンドが描く未来図について、河野と代表の佐俣アンリの両氏に話を聞いた。
──まず河野さんにお聞きしますが、どうしてITVから移籍したのでしょうか。
河野:ベンチャーキャピタリストを志して2002年に新卒でジャフコに入り、2008年にITVに入って11年間を過ごさせてもらい、昨年40歳を迎えました。
次の10年をどう過ごすかについて考えていたところ、それがたまたまITVの新しいファンド設立のタイミングと重なり、それにコミットするのか否か、自分自身の今後のキャリアについて考えるタイミングとなりました。
また自分が担当する中で、メルカリ、ラクスルなど大きいエグジットを成し遂げる会社が出たことで、こういった会社をより深く安定的に一貫して支えたいという思いが強くなってきていました。
未上場段階でより大きな金額を機動的に集めたいという要請があった際に、自分たちのファンドサイズですらフォローオンできないという実情があった。レイターでもう一度勝負したいという起業家に大きい金額を預けられるプレイをしたいと思うようになったのです。
───そこで、河野さんは独立ではなく、独立系VCへの移籍という道を選ばれました。
河野:「この業界は独立して一人前」というある種の既定路線や固定概念があり、いつかのタイミングでは独立するものと思って研鑽を続けてきましたが、これは一種の呪縛のようなもので、「独立」というのは目的ではなくあくまで手段に過ぎないはずです。
個人の与信で独立しようとした時に、個人でどれだけトラックレコードを積んでいようが、まずは20億円であったり、小規模なファンドで独立し、そこから徐々に大きくしていく。とすると、業界の中に変化の胎動もある中で、やりたいことができるようになるまで5年、10年とかかるのはもったいないなと感じました。
また、シードへの投資を得意として活動してきたわけではない中で、得意とするところでないところで、しかも小さなファンドで参入したとしても業界への貢献度は小さい。
何をなすべきかと言えば、起業家を最初から最後まで支えられるような投資をすべきであると感じていたので、私の中で最初の選択肢であった「独立」から「移籍」へと方向性が変わっていったのです。