賃貸アパート大手のレオパレス21が経営危機に瀕している。5月10日に発表した2019年3月期決算は、補修工事費用の拡大で686億円もの巨額最終赤字に陥り経営の先行きが懸念されている。
686億円の赤字はリーマンショック後の2010年3月期に計上した790億円の赤字に次ぐ水準で、2015年3月期以来の無配に転落。レオパレスは昨年5月、自社が手がけた賃貸アパートで建築基準法違反が発覚して以降、施工不良問題が経営を揺るがしている。
こうした状況の中で、レオパレスの株価は5月10日の終値222円から5月27日の高値438円まで約2倍に上昇した。
旧村上ファンド系のレノが買い増し
株価上昇のきっかけとなったのは、投資会社レノ(東京都渋谷区)の「買い」である。レノは旧村上ファンドの関係会社であり、「モノ言う株主(アクティビスト)」として有名である。そのレノが5月14日に大量保有報告書を提出し、レオパレス株を買い集めていた事実が明らかになったのだ。
村上ファンドが最初に世間から注目されたのは2000年。当時東証2部に上場していた昭栄(現ヒューリック)に、日本で初めて敵対的TOB(株式公開買い付け)を仕掛けたことで、一躍時の人となった。
最盛期の村上ファンドの純資産総額は4000億円を超え、膨大な資金力を背景に東京スタイル、大阪証券取引所、阪神電気鉄道などの株式を次々と取得。ライブドアがニッポン放送株を取得できたのは「村上ファンド」との共闘があったことなどが明らかになっている。
2006年にニッポン放送株のインサイダー取引容疑で代表の村上世彰氏が逮捕され、村上ファンドは解散。その後、村上氏は活動拠点をシンガポールに移している。
今回レオパレス株を取得したレノの代表取締役に、村上ファンドで当時企画課長だった三浦恵美氏が就任しているが、実質的には村上氏が率いていると見られている。
レノはレオパレス株の買い増し、5月23日にグループの保有割合は16.18%まで上昇。保有目的を「投資および経営陣への助言、重要提案行為などを行うこと」としている。
レオパレス株はこれまで、英投資ファンドの「オディ・アセット・マネジメント」の動向が注目されていた。施工不良問題で株価が急落する中、レオパレス株を一貫して買い進めてきたからだ。オディは現在、15.62%まで保有割合を増やしているが、レノの保有割合には及ばない。
なぜレノは、レオパレス株を買い集めているのだろうか。まずはアクティビストファンドの手法から考えてみよう。
アクティビストファンドの手法
レノは旧村上ファンドの流れをくむ「アクティビストファンド」。アクティビストファンドは、イベントドリブン型のヘッジファンドとも呼ばれる。イベントドリブンとは、企業のM&A(合併・買収)、経営破綻、事業再編などのイベントを利用して収益を得る手法をいう。このようなイベントが引き金となり、株価が激しく上下する。その値動きを収益機会とするのである。
アクティビストファンドは、値ごろ感のある上場企業の株式を取得し、株価が上昇した段階で手放し、利ザヤを稼ぐ。株主の権利をフルに活用し、事業提案を行うなど経営陣にも積極的に働きかける。