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2019.05.22 07:00

JALが80億円規模の投資ファンドを設立したワケ──背景にある「攻め」と「守り」

Shutterstock.com

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スタートアップとの提携によって、スピード感をもって先進分野に挑戦する「オープンイノベーション」に取り組む大企業が増えている。日本航空(JAL)もその一つだ。

2019年1月24日にコーポレート・ベンチャーキャピタルファンド(以下、「CVC」)「Japan Airlines Innovation Fund」の設立を発表したJAL。今後は年間約50社とディスカッションを行い、出資先を検討していくという。

彼らがスタートアップとの協業によって実現したい未来と、それによって克服すべき自社の課題とは。事業創造戦略部事業戦略グループのグループ長を務める森田健士に聞いた。

「30年後の移動」に関わる体験をアップデートする


日本航空事業創造戦略部事業戦略グループの森田健士

まず、JALはどのようなスタートアップに投資をするのか。森田は、「MaaSの概念が普及するこれからの世の中で、航空分野でのリーディングカンパニーでありたい」と方針を説明する。

「MaaS(Mobility as a Service)」とは、個人が自らの移動を最適化するために様々な移動手段を組み合わせ活用する考え方のこと。鉄道や飛行機を問わず、各人がシームレスに移動できる状態の実現だ。この前提のもと、投資領域として注目しているのは以下の3つだという。

1. シームレスな移動

ビジネスジェットやフライングカーなど、既存の旅客に限定しない広い視点で「移動」をより豊かにする。

「いま航空業界が担っているのは『移動』のほんの一部でしかありません。空港から空港だけではなく、空と陸の動線など、より広い意味での『移動』に関わっていきたい」

2. 動かないことを前提にした移動サービスの提供

オンラインショッピングや音声会議など、近年はネットの普及によって移動の必要がなくなっている領域も少なくない。こうした領域の情報をキャッチし、可能な範囲で関わっていくという。

「これまで私たちはお客さまの『移動』を前提に、いかにそれを豊かにするかを考えてきました。しかし、これからはそもそも『移動しない』人のことを考える必要がある。この発想で大きく成功しているのが、オンラインショッピングによって買い物に出かける手間をなくしたアマゾンでしょう。近年はドローン物流にも積極的で、配達する人の手間をなくそうとしています」

3. 「移動する」ことに対しての付加価値

移動の必要性をなくす事業が増えているおかげで、生身の体で体験する『移動とその目的地』には生の体験としての付加価値が高まっている。単に移動させるだけでなく、よりよい体験を提供するための工夫にも注力する。

「どれだけ移動中に快適さ・楽しさを感じていただけるか、実際に行きたいと思っていただけるか。航空会社として、フライトを生で体感しなければ得られない『価値』は、最も重要な要素です。今後は宇宙旅行もこの領域に含まれるようになるはずです」
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文=木上芙実子 人物写真=野口直希

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